特定技能外国人の活用が進む中で「特定技能外国人を採用することになったが、支援は自社で行うべきか、登録支援機関に依頼すべきか迷っている」という悩みを抱えている企業が増えています。
これから外国人労働者を雇用しようと検討している企業は、「登録支援機関」と上手に関わっていくことで、効率的に雇用を進めていくことができます。
本記事では、登録支援機関の支援や業務の内容、支援機関を選ぶ際のポイントを紹介します。ぜひ参考にしてください。
目次
特定技能制度における「登録支援機関」とは?
「外国人雇用のための特定技能登録支援機関とは?」
「特定技能登録支援機関を選ぶにはどのようなポイントで選べばよいか?」
「特定技能登録支援機関はどこまで対応してくれるの?」
など特定技能制度の活用に向けて登録支援機関の導入を考えている企業も多いのではないでしょうか。
外国人の人材確保に有効な制度であるものの企業にとって、制度利用への手続きや採用後の支援など本来の業務に加えて、労力や時間を割かなければならないという不安がつきまといます。
また制度を利用して採用したものの外国人労働者へのサポートが手薄いと、不満につながり転職されるリスクにつながります。そこでこの手続きや支援を企業に代わって代行する「特定技能登録支援機関」を上手に利用することでさまざまな不安が解消されるとともに、企業側の負担が大きく軽減されます。
特定技能制度について
少子高齢化による影響で企業にとって国内での人材確保は難しくなってきており、人材不足解消は深刻な課題となっています。
そのため外国人労働者を積極的に採用する企業も増え、2008年10月に48万6,398人だった外国人労働者は、2021年10月には172万7,221人と3倍以上になっています。
ただ外国人の雇用には雇用の継続や待遇など、労働者・受け入れ企業側にも不安な点があります。そこで安定的な外国人雇用を促進するため、2019年4月に在留資格として「特定技能制度」が新設されました。
1号認定については5年間、2号認定については無期限で日本で働くことができます。対象分野は介護・建設や宿泊など指定されている14の業種が対象となっており、この制度を利用することで外国人労働者は安心して働く場所を確保できます。企業は即戦力となる外国人労働者を雇い入れることで人材不足を解消できるメリットがあります。
特定技能制度上必要な支援
特定技能の支援には下記の10項目があります。
- 入国前のガイダンスの提供
- 入国時・出国時の空港までの送迎
- 保証人になるなど住宅確保に受けた支援
- 生活に関するオリエンテーションの提供
- 日本語習得の支援
- 外国人からの相談・苦情への対応
- 各種行政手続きへの情報提供と支援
- 日本人との交流促進支援
- 外国人が正当でない理由で解雇された場合などへの転職支援
- 定期的な面談・行政機関への通報
これらの10項目それぞれに義務的支援と任意的支援が存在し、制度活用のための支援計画書に支援する内容を盛り込む必要があります。
義務的支援と任意的支援について
義務的支援
義務的支援とは特定技能制度を利用する上で、受け入れる企業が必ず行うべき支援のことです。受け入れ企業で取り組むことが難しい場合は、登録支援機関に業務委託することが可能と認められています。
登録支援機関は求められている義務的支援に対応できることが必要で、義務的支援に問題が発覚した場合には、出入国在留管理庁による指導や登録取り消しになることがあります。
任意的支援
任意的支援は、義務的支援に加えて実施することが望ましい支援のことです。これまでと違った環境下で働くことになった外国人労働者にとって、不安や不満を感じることも出てくるかもしれません。
そういったとき仕事上も生活上もサポートできる体制があれば、労働者にとって安心でき企業にとっても制度を上手に活用することにつながります。
ただ支援内容を計画に盛り込んだ場合、実施義務となるので可能な限りのサポートにしておきましょう。また登録支援機関に委託する場合は、対応が可能かどうかも事前に確認しておく必要があります。
特定技能登録支援機関とは?
特定技能の制度を利用することは企業にとってメリットがありますが、受け入れ企業にとっては制度についての専門的な知識が必要になるなど、独自に取り組むには難しい点もあります。
特定技能外国人の就労・労働を円滑に進める上で、登録支援機関を利用する方法があります。企業は登録支援機関に必要な業務を外部委託することで、特定技能制度利用のための行程をスムーズに進めることが出来ます。
登録支援機関は
- 支援機関自体が適切である(例 5年以内に出入国・労働法令違反がない)
- 外国人雇用を支援する体制が整っている(例 外国人が理解できる言語で支援が出来る)
などの条件を満たした上で、出入国在留管理庁長官の登録を受けている団体や企業になります。 登録支援機関は次のような団体や個人などが対象となっています。
- 業界団体
- 社労士
- 民間法人
- 行政書士
2022年12月23日現在 全国で7,785件の支援機関が登録されており、多くの登録支援機関が存在します。多くの登録支援機関の中からどのような機関を選べばよいのでしょうか。
特定技能登録支援機関を選ぶには?
まず登録支援機関についてどのようなものがあるのでしょうか。主に次の3つの形で運営されています。
- 非営利団体が運営母体
- 行政書士・社労士が運営母体
- 人材派遣会社が運営母体
それぞれの運営母体の特徴について説明していきます。
非営利団体が運営母体
技能実習の受け入れや外国人就労を支援する非営利団体が運営しており、技能実習生とのつながりを持っていることから国内の外国人人材を短期間で確保できます。
行政書士・社労士が運営母体
行政書士事務所・社会保険労務士事務所が運営しており、登録する事務所が増えています。行政書士や社労士は在留資格の許可を専門的分野にしていることから、特定技能制度への理解も持ち合わせています。
人材派遣会社が運営母体
すでに人材が登録されている人材派遣会社が運営しており、人材確保から採用・就職後のサポートまでの実績を持ちスムーズに対応できます。とくに人材派遣に特化しているため採用からアフターフォローまで一貫して任せることができます。
実際に選ぶときのポイントは?
選ぶポイントとしては次の4つをチェックしておきましょう。
- 運営母体が信頼できる組織であり活動をしているか
- 支援責任者として母国語ができる外国人を正規雇用しているか
- 管理費は適切で、支援内容が希望に沿ったものになっているか
- 対応が迅速で的確であるか
これらのことに留意しながら、法務省の出入国在留管理庁のウェブサイトで登録されている団体や企業を調べていきます。
運営母体が信頼できる組織であり活動をしているか?
登録支援機関を運営母体である企業や団体などがきちんと存在しており、信頼できるところであるかをウェブサイトや口コミ、またつながりのある他の企業の担当者にも聞いてみましょう。
また約7,800件もの登録がある中で、実際に支援活動を活動をしていない登録機関が多く存在します。「登録しただけ」というケースや「以前は支援業務をしていたが今はしていない」などのケースがあります。
今も活動を継続しているかどうかを確認しておきましょう。活動実績が支援内容の充実に欠かせない条件となってきます。
支援責任者として母国語ができる外国人を正規雇用しているか?
支援責任者は制度利用の軸となる存在です。採用後の外国人労働者へのアフターフォローも必要なため、対象となる外国人労働者の母国語ができる人材が望ましいでしょう。また引き続き制度を活用していくため対応できる言語についても確認が必要です。
支援責任者について「これから雇う予定」「アルバイトで対応」などというところは避け、できるだけ正規雇用(正社員)の支援責任者がいるかどうかを確認しておきましょう。労働者や企業からの要望にきちんと対応するためには正規雇用の担当者がいると安心です。
管理費は適切で支援内容が希望に沿っているか?
管理費は登録支援機関によって変わってきますが、相場としては1人あたり月々20,000円から30,000円程度となっています。機関によっては、丁寧な事前のガイダンスや特定技能ビザの取得などを、オプションとして組み込んで相場より高い場合もあります。
制度を活用するときに部分的に業務を委託するのか、すべての業務を委託するのかなど希望する支援内容を確認しておきましょう。
委託できる業務が正当な料金で実施されているのか、また相場を理解する上でも見積りは複数の団体や企業から取り寄せ比較しておきましょう。そうすることで登録支援機関を選ぶための大きな判断材料になります。
対応が迅速で的確であるか?
支援は24時間365日の対応が必要です。きちんとした対応ができないと国の指導が入る、また最悪の場合せっかく制度活用登録の手続きを済ませたのに、登録が取り消される事態になりかねません。
登録支援機関が企業の必要とする地域で、対応できるかどうかを確認しておきましょう。外国人労働者がトラブルに巻き込まれた場合など、緊急対応が必要な場合も想定されます。
仕事上の悩みやトラブルはもちろんのこと、生活支援など細やかなサポートが迅速に的確にできます。外国人労働者の不安を解消できるだけでなく、転職のリスクを抑え継続的な雇用につながります。
まとめ
特定技能制度は少子高齢化に伴い今後深刻化する国内企業での、人材不足解消に向け国が創設した比較的新しい制度です。
今後この制度を利用して、専門性が高く即戦力となる外国人労働者を雇用しようとする企業のニーズは高まってくると予想されます。制度自体を活用することは魅力的であったとしても、ただでさえ人材不足に悩まされている企業にとって
「通常業務に加え労力を割いて制度登録や活用をすることが難しい」
「制度上に必要とされる手厚いサポートや柔軟な対応が難しい」
と躊躇する企業もあるのではないでしょうか。そういったときには、国が認める登録支援機関を活用する方法があることを知っておきましょう。これからの人材不足を解消するための制度活用を円滑に安定的に進めることができるでしょう。
<参考記事・URL>
厚生労働省 外国人雇用状況の届出状況について(報道発表)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/gaikokujin-koyou/06.html
出入国在留管理庁 登録支援機関(Registered Support Organization)
https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri07_00205.html
JITCO 在留資格「特定技能」とは
https://www.jitco.or.jp/ja/skill/