「漁業」業界では、2020年から流行している新型コロナウイルスの影響を受けて、国産の食品の価値が高まっていることから、漁業に従事する人材の確保が重要となっています。
人材の確保のために、外国人技能実習生の受け入れを積極的に行っています。技能実習生の雇用を検討している「漁業」業界の企業は、スムーズに受け入れられるように実態を把握しておく必要があります。技能実習生を受け入れるといっても、どの職種・作業も行えるわけではありません。
受け入れた技能実習生がどの職種・作業を行うことが出来るのかも確認しておきましょう。本記事では、「漁業」業界の現状と技能実習生受け入れの流れ、職種と作業内容について詳しく解説します。
目次
●「漁業」業界の現状
漁業業界の現状は、漁業従事者の高齢化と後継者不足が課題とされています。どの業界でも言えることですが日本全体として、少子高齢化や人口減少などが進んでいます。特に漁業では親から子へ継承されていくことが多いですが、若者が漁村から都会へ流出しています。
そのため、漁業従事者の高齢化が進み、後継者の不足に繋がっています。これからの漁業を担う若手がいなければ、今後漁業が衰退していくことは明らかです。
少子高齢化により労働者人口が減少している中、さらに若者の都会流出で拍車がかかる労働者不足において、外国人を雇用することは、これらの課題を解消する手助けとなるでしょう。
ただし、企業が外国人技能実習生を受け入れるには、定められた要件を満たす必要があります。要件を満たさなければ、どれだけ優良な企業であっても、技能実習生を受け入れることはできません。
要件は、全産業に共通しているものと漁業業界特有のものに分類されます。それぞれについて見ていきましょう。
技能実習生を受け入れる要件
企業が技能実習生を受け入れるには、次のような要件があります。下記の項目は、全産業共通の要件となります。
- 法律に定められた欠格事由に該当していないこと
- 技能実習責任者・技能実習指導員・生活指導員を配置すること
- 技能実習生の住居を確保すること
- 賃金を日本人と同額以上に設定すること
- 社会保険に加入させること
- 帳簿を作成・保管すること
全産業共通の要件の中で、「法律に定められた欠格事由に該当していないこと」はとても重要です。技能実習生は、外国から受け入れる日本の社会に欠かせない人材です。国としても欠格事由に該当するような企業に技能実習生を安心して任せることができません。
技能実習生は母国を離れて、日本で生活をしながら働くこととなります。環境を変えて生活することは大きなストレスです。そのため、技能実習生は常に不安を感じています。少しでも不安やストレスを軽減するために、メンターの配置や住居の確保を行う必要があります。
そして賃金は日本人労働者と同額以上に設定し、技能実習生に対して支払わなければなりません。これらの要件に違反してしまうと、一時的、もしくは永遠に技能実習生の雇用ができなくなる可能性があるので注意しましょう。
技能実習生を受け入れる漁業業界特有の要件
漁業業界で技能実習生を受け入れる際の要件は、次の通りです。
- 漁業許可をとっていること
- 技能実習生が乗り組む漁船と乗っていない者の間で無線、またはその他の通信手段が確保されていること。
漁業業界で技能実習生を受け入れるには、漁業法における漁業許可制度に基づき、漁業の許可を受けている必要があります。
乱獲などを制限するために、特定の漁業を営むに当たって、農林水産大臣又は都道府県知事の許可を受けなければならないという制度です。漁業で技能実習生を受け入れることを検討している企業は、漁業の許可を受けていなければなりません。
また、技能実習生が乗り組む漁船と乗っていない者との間で連絡が取れる環境を準備しておく必要があります。連絡が取れない状況にしてしまうと、こちらの指示を伝えることができず、管理が不行き届きとなってしまいます。
これらの漁業業界特有の要件に注意し、技能実習を受け入れるための環境を準備することを念頭に置いておきましょう。これらの要件を満たしていない場合、技能実習生を受け入れることはできません。
●技能実習生の受け入れ
技能実習制度は、外国人が母国に帰国したあと、学んだ技術を活かして活躍してもらうことを目的として、日本で働きながら技術を学ぶための制度です。在留期間は最長5年で、延長はできません。
技能実習生を受け入れると決めたら、受け入れるための流れと費用が気になりますよね。「漁業」業界で技能実習生を受け入れる際の流れと費用について、詳しく見ていきましょう。
受け入れの流れ
技能実習生を受け入れる方法は次の2通りがあります。
- 企業単体型
- 団体監理型
企業単体型は、海外に取引先や支店があり、自社で技能実習生を受け入れられるルートがある企業が実施する方法です。大企業ではこちらの方法が多く選択されます。一方で団体監理型は、監理団体が技能実習生の求人から受け入れまでをサポートしてくれる方法です。
ここでは団体監理型を選択したと仮定します。監理団体に委託して外国人技能実習生を受け入れる流れは、次の通りです。
- 任意の監理団体に加入する
- 現地(外国)で外国人の面談をする
- 現地(外国)で外国人向けに教育・講習を行う
- 日本に入国する
- 監理団体にて外国人向けに講習を行う
- 外国人技能実習生を受け入れる
監理団体は複数あるので、自社に合う団体かどうか、比較しながら検討しましょう。技能実習生の受け入れを監理団体に委託すれば、スムーズに進めることができます。企業は本業に集中しながら、技能実習生の受け入れを進められ、人手不足を補うことができます。
費用
技能実習生を雇用するには、さまざまな費用がかかります。団体監理型で受け入れを行うためには、監理団体への入会費や年会費なども必要です。各費用の費用相場は次の通りです。
監理団体への加入 | ・入会費:1万~10万円 ・年会費:2万~15万円 |
JITICOへの加入 (監理団体によって加入必須) | ・年会費:10万~30万円 |
現地への事前訪問 | ・渡航費:約15万~25万円 |
技能実習生の入国準備 | ・在留資格申請:約2万~4万円 ・技能実習生総合保険料(37ヶ月分):約2万~6万円 ・健康診断費用:約1万円 ・入国前講習費:約1万5千円~4万円 ・入国渡航費:約10万円 |
入国後にかかる費用 | ・入国後研修:約10万円 ・講習手当:6万円 ・健康診断費用:約1万円 |
これらは、技能実習生を受け入れるためにかかる費用の相場です。技能実習生を受け入れたあとも、日本人労働者と同額以上の給与を支払わなければなりません。技能実習生の最長在留期間で考えると、給与を除いても5年で1人当たり100万円程度はかかることを念頭に置いておきましょう。
●技能実習「漁業」の職種と作業内容
技能実習生は、どの業務も担当できるわけではありません。漁業業界で技能実習生が従事できる職種と作業は次の2職種9作業に限定されています。
職種 | 作業 |
漁船漁業 | ・かつお一本釣り漁業 ・延縄漁業 ・いか釣り漁業 ・まき網漁業 ・曳網漁業 ・刺し網漁業 ・定置網漁業 ・かに・えびかご漁業 ・棒受網漁業 |
養殖業 | ・ホタテガイ・マガキ養殖作業 |
技能実習生は現場の業務を担当することが多いです。作業には必須業務・安全衛生業務・関連業務・周辺業務があり、必須業務は50%以上、安全衛生業務は10%以上しなければならないと定められています。
「漁業」業界で外国人技能実習生の受け入れを検討している企業は、技能実習生を受け入れた場合に上記の職種・作業内容で雇用できるかを検討しましょう。
【まとめ】正しい知識で「漁業」業界の技能実習生を受け入れよう!
いかがでしたか。「漁業」業界の現状と技能実習生受け入れの流れ、職種と作業内容について解説してきました。後継者不足が問題視されている「漁業」業界ですが、外国人技能実習生を受け入れることで、人手不足を解消することが期待されます。そのため、積極的に受け入れを検討する企業が増えています。
しかし技能実習生が行える職種・作業内容は決まっています。技能実習生を受け入れた場合に、技能実習生に任せられる業務があるか事前に確認しましょう。正しい知識で「漁業」業界の技能実習生を受け入れましょう。
参考記事・文献
Global HR Magazine 漁業業で特定技能外国人を採用するには?
https://global-hr.lift-group.co.jp/161
外国人雇用のための在留資格の基礎知識 特定技能 漁業業分野での外国人雇用
https://www.zairyusikaku.jp/%E7%89%B9%E5%AE%9A%E7%94%A3%E6%A5%AD%E5%88%86%E9%87%8E%E3%80%80%E6%BC%81%E6%A5%AD%E5%88%86%E9%87%8E/
特定技能マガジン 漁業で「特定技能」外国人を雇用する方法
http://tokuteiginou-magazine.com/archives/tag/%E6%BC%81%E6%A5%AD
外国人技能実習機構 特定の職種及び作業に係る技能実習制度運用要領 -漁船漁業職種及び養殖業職種に属する作業の基準について
https://www.otit.go.jp/files/user/docs/abstract_159.pdf