近年、人手不足の解消やグローバル化を目指して、外国人労働者を雇用する企業が増えています。そしてその分、外国人を雇用することで生まれる問題も多くなっています。これから外国人労働者の雇用を考えているのであれば、雇用問題はできるだけ起こしたくないですよね。
本記事では外国人雇用問題とはどのような問題なのか、原因と対策について解説していきます。
目次
外国人雇用問題とは?
外国人を雇用する企業が増えた分、外国人雇用問題も増加しています。外国人雇用問題とは外国人を雇用することで生まれる問題のことで、主に次のような事象が挙げられます。
- 外国人にとって理不尽な労働環境
- コミュニケーション・社会との繋がりの不足
それぞれ具体的に解説します。
外国人にとって理不尽な労働環境
外国人雇用問題の1つとして、外国人にとって「理不尽な労働環境」が発生していることが挙げられます。理不尽な労働環境とは主に次のような環境です。
- 長時間労働
- パワハラ・いじめ
厚生労働省から発表された「技能実習生の実習実施者に対する令和2年の監督指導、送検等の状況」によると、労働基準関係法令違反は70.8%もありました。
それぞれ詳しい状況を見ていきましょう。
長時間労働
長時間労働は日本社会でも問題となっていますが、問題として取り沙汰されることで徐々に改善の方向に向かっているのではないでしょうか。しかし、会社によってはその分のしわ寄せが、外国人労働者の負担となっているところもあるようです。
外国人労働者はビザの関係上、簡単に転職ができません。そのため、長時間労働で体調を壊しても転職を考える余地がなく、そのまま過労死や労災死に繋がってしまうこともあります。
パワハラ・いじめ
言葉や文化が異なる外国人労働者は、日本人労働者の中に馴染めずにいじめやパワハラの標的になることも少なくありません。外国人労働者を雇用する際は、外国人側だけではなく日本人側にも教育が必要です。
言葉の壁に関しては外国人だけに学習を強いるものではなく、お互いに学習し合って良いチームワークを築けていくツールにすべきです。
コミュニケーション・社会との繋がりの不足
外国人雇用問題の1つとして、「コミュニケーション・社会との繋がりの不足」も挙げられます。コミュニケーション・社会との繋がりが不足していると次のような問題が発生する恐れがあります。
- 在留資格の悪用
- 犯罪
それぞれ詳しく見ていきましょう。
在留資格の悪用
世界基準と比べても、日本はビザの取得が難しい国です。しかし、抜け穴はあるため、外国人労働者が在留資格を悪用してしまうこともゼロではありません。在留資格の悪用とは主に次のような事象です。
- 正規ルート以外のビザ取得
- 在留カードの偽装
在留資格を悪用している外国人を気づかずに雇用したり、雇用後に外国人労働者が在留資格を悪用していると、雇用側の企業も「不法就労助長罪」に問われてしまいます。外国人労働者とのコミュニケーションをしっかりとり、未然に防ぐことが大切です。
犯罪
1990年代以来、日本で検挙された犯罪件数の中で外国人によるものは2%前後で決して多くはありません。外国人労働者の中には日本人と文化・倫理観・価値観が異なる人が多く存在します。その分トラブルも発生しやすいのが現状です。
外国人だから犯罪をしやすいというわけではありませんが、トラブルの種が多い分犯罪に繋がってしまいやすいのも確かです。外国人労働者と社会との繋がりをしっかり確保して、社会全体で外国人労働者を見守ることも大切です。
外国人雇用問題が起こる原因
ここまで外国人雇用問題とは何なのかを説明してきました。雇用問題が起こってしまう原因は、次のことが挙げられます。
- 契約書に不備がある
- 受け入れ態勢が整っていなかった
- 外国人労働者採用の知識が不足していた
- 日本人との格差が生じている
それぞれ具体的に解説します。
契約書に不備がある
日本では雇用の際、雇用契約書の準備が必須ではありません。そのため、賃金や労働時間などの雇用契約の内容を口約束したり、曖昧にしたり、労働者の同意を得ずに決めてしまう企業もあります。
雇用契約書を準備していても日本語のみで、外国人労働者がしっかり理解していないケースもあります。このような契約書の不備が双方の認識違いに繋がり、労働環境の悪化を助長してしまいます。
受け入れ態勢が整っていなかった
外国人労働者の雇用を決めたら、日本人労働者にもしっかり教育が必要です。雇用する外国人の国の文化・生活習慣・宗教など、日本人労働者にも理解を求める必要があります。
また、コンプライアンスの再確認も重要です。日本人同様、外国人に対してもハラスメントや差別が起きないように十分教育しましょう。
外国人労働者採用の知識が不足していた
外国人の雇用では日本と異なる法律や制度が適用されることがあります。雇用主は外国人の雇用手続き・入国管理法についてしっかり知識を蓄えましょう。手続きにミスがあると「不法就労」となってしまう恐れがあります。
雇用した外国人労働者が「不法就労」となると外国人労働者が働けなくなるだけではなく、雇用側も「不法就労助長罪」という罪に問われる可能性があります。知識をしっかり持ち、未然に防ぎましょう。
日本人との格差が生じている
外国人労働者は給与水準が日本人より低く設定されることが多いです。言葉の壁がネックとなり日本人に比べて昇進も遅くなる傾向があります。このような状況から、必然的に外国人と日本人の間に格差が生じてしまいます。
外国人雇用問題を起こさない対策
外国人雇用問題が起きる原因を説明してきました。ここでは、外国人雇用問題を未然に防ぐ対策を紹介します。外国人雇用問題を未然に防ぐ対策は次の通りです。
- 雇用契約書の見直し
- 外国人が働く労働環境の整備
- 外国人雇用への理解を深める
雇用契約書の見直し
雇用契約書がない、または雇用契約が曖昧であったり口頭で行われたりすることで、長時間労働など双方の認識違いが発生してしまいます。そのため外国人を雇用する際は必ず雇用契約書を作成し、曖昧な点がないように見直しましょう。
日本語の理解が乏しい外国人に対しては、その外国人の話す言語でも雇用契約書を作成し、双方がしっかり理解できていることを確認してください。
外国人が働く労働環境の整備
外国人を雇用する際には日本人側にも外国人労働者との接し方など教育を行いましょう。英語版のマニュアルを準備したり、外国人専用の昇給制度を設置するなど外国人にとって働きやすい環境を整えましょう。
外国人雇用への理解を深める
社内での外国人労働者への理解を深めることは簡単ですが、地域社会の理解を得るのはとても大変です。人によっては外国人に対して怖い、治安が悪くなるなどのマイナスイメージを抱いている人もいるのが事実です。
2020年NHKで行われた世論調査によると、日本に外国人が増えるのは賛成と言う人が70%なのに対して、自分の地域に外国人が増えるのは賛成という人は58%と下がっています。
自分の地域に外国人が増えることに不安を抱く理由は、治安が悪くなることを挙げる人が多数です。しかし、外国人労働者が増えることで必ずしも治安が悪化するわけではありません。
地域社会への理解を深めるためにも、地域ボランティア活動やイベントへ積極的に参加し、実際に交流することで誤解を解くのもひとつの手です。
【まとめ】外国人雇用問題が起きない環境を整えよう
ここまで外国人雇用問題・原因・対策を解説してきました。
人手不足の解消、グローバル化を目指すためといって何も考えずに外国人労働者を雇用することは危険です。外国人雇用問題が起きている実態を把握し、未然に防ぐことが大切です。
雇用主自身が外国人労働者を雇うための知識を学ぶだけではなく、日本人社員に対してもしっかりと教育を行ってください。雇用契約書やマニュアルの見直し、外国人労働者の昇給制度など外国人労働者を雇用する態勢を整え、準備万全にして採用活動を始めましょう。
厚生労働省「技能実習生の実習実施者に対する令和2年の監督指導、送検等の状況
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20618.html
NHK「日本で働く外国人増加「賛成」が70% NHK世論調査」
https://www3.nhk.or.jp/news/special/izon/20200607yoronzouka.html