労働力の獲得のため、外国人労働者の雇用を行う企業が増えています。2019年4月に改正出入国管理法の施行などが行われ、政府も外国人労働者の受け入れを推奨するようになりました。
企業の中には、外国人労働者の受け入れ体制が整っていなかったり、体制を整えるための資金が足りないといった悩みもあり、なかなか積極的な採用が行えないと言った声もあります。
こうした悩みを解決してくれるのが「助成金」です。「助成金」は法人税や雇用保険を財源としているので、国も活用を推奨しています。
この記事では「助成金について詳しいことが分からない」「どうやって活用したらいいの?」と悩まれている方に向けて、外国人雇用で活用できる助成金の詳細をわかりやすく解説していきます。
目次
外国人雇用で使える助成金とは?
「助成金」は雇用の増加や人材育成のために、厚生労働省が交付を行っているものです。各助成金には条件があり、条件を満たすと交付されます。
「外国人を雇用すれば必ず貰える」といったものではないため、申請時にはそれぞれの条件をよく理解しておくことが必要です。次の章では主な助成金の種類を解説するので、参考にしてみてください。
助成金の主な種類と申請方法
ここでは、助成金の主な種類と、申請方法について解説していきます。
雇用調整助成金
景気の変動(悪化)などの経済的な理由から事業縮小する企業(事業主)に対し、雇用している労働者の雇用調整のために支給される助成金です。具体的には一時的に労働者を休業させたり、職業訓練を受けさせたり、出向させる等の目的のために交付されます。
休業・出向と職業訓練、それぞれで助成額が変わります。休業出向の場合は以下の通りです。
休業・出向の場合 | 中小企業 | 中小企業以外 |
1日あたりの支給額 | 賃金相当額×2/3 (上限8,265円) | 賃金相当額×1/2 (上限8,265円) |
職業訓練においては、事業所内外によってさらに金額に変動があります。
職業訓練の場合 | 中小企業 | 中小企業以外 |
事業所内訓練 | 1,500円/1人 | 1,000円/1人 |
事業所外訓練 | 3,000円/1人 | 2,000円/1人 |
助成を受けるための要件は以下のとおりです。
- 雇用保険に加入している中小企業事業主もしくは労働者
- 事業の直近3カ月の売上高または生産量の月平均値が、前年同期に比べ10%以上減少している
- 実施する休業または出向などが労使協定に基づくものであること
手続きはオンラインや郵送、ハローワークで行えます。必要書類を提出し、審査が通れば支給される流れです。
手続きには以下の書類が必要となります。
- 雇用調整事業所の事業活動の状況に関する申出書
- 支給要件確認申立書・役員等一覧
- 休業・教育訓練実績一覧表
- 助成額算定書
- (休業等)支給申請書
- 休業協定書(労働組合等との確約書等でも代替可)
- 事業所の規模を確認する書類
- 労働・休日の実績に関する書類
- 休業手当・賃金の実績に関する書類
休業・教育訓練実績一覧表、労働・休日の実績に関する書類、休業手当・賃金の実績に関する書類についてはデータとしてCD及びDVDでの提出が可能です。
トライアル助成金
トライアル助成金は、就業が困難な求職者(今までの業務経験、スキル、知識等などから安定した雇用が難しい場合)の雇用を促し、企業内でのキャリアアップや正社員登用の促進を実施する事業に対して交付されます。
企業と求職者それぞれのミスマッチを避け、雇用の機会を増やすことを目的としています。
助成額は1ヶ月に1人あたり最大4万円となっています。期間は最長で3か月です。
対象となる要件は以下の通りです。
- ハローワークの紹介日の前日〜過去2年以内に、2回以上離職や転職をしている人
- 紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている人
- 妊娠、出産、育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業に1年を超えて就業していない人
- 55歳未満の人で、紹介日時点で、ハローワーク等において担当者制による個別支援を受けている人
- 紹介日時点で、就職するために特別な配慮が必要な人(生活保護、生活困窮者など)
候補者の試用を開始してから2週間以内に、必ずハローワークへ「実施計画書」を提出し申請を行う必要があります。助成金は試用期間を終えた候補者が、正社員となった2カ月後に交付されます。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金には、「正社員化コース」と「働き方改革支援コース(全5種)」があります。
正社員化コースでは、外国人を正社員として雇用したり、無期雇用をするために交付される助成金です。
正社員化コースの助成金 | 中小企業 | 中小企業以外 |
有期雇用から正規雇用となった場合 | 570,000円/1人 | 540,000円/1人 |
有期雇用から無期雇用となった場合 | 285,000円/1人 | 270,000円/1人 |
無期雇用から正規雇用となった場合 | 285,000円/1人 | 270,000円/1人 |
助成額は以上のとおりで、いずれも年間20名までの上限があります。
非正規雇用から雇用形態を変更したあと、正規雇用もしくは無期雇用の労働者として6ヶ月分賃金を支給した日の翌日から2ヶ月以内に申請を行う必要があります。
働き方改革支援コースは、5種類に分かれています。いずれも1年以上の雇用管理改善(処遇の改善や賃金の改定など)に努めた場合に交付される助成金です。会社全体の制度の見直しと変更を目的としています。
申請期間は、正社員化コースと同じですが申請書類はコースごとに一部異なるため、申請前に必ず厚生労働省公式ホームページを確認しましょう。
各コースの助成金は以下の通りです。
中小企業 | 中小企業以外 | |
昇格した人数が1~5人の場合 | 32,000円/1人 | 21,000円/1人 |
昇格した人数が6人以上の場合 | 28,500円/1人 | 19,000円/1人 |
中小企業 | 中小企業以外 |
570,000円/1事業所 | 427,500円/1事業所 |
中小企業 | 中小企業以外 |
380,000円/1事業所 | 285,000円/1事業所 |
中小企業 | 中小企業以外 |
190,000円/1事業所 | 142,500円/1事業所 |
中小企業 | 中小企業以外 |
225,000円/1人 | 169,000円/1人 |
中小企業 | 中小企業以外 | |
1時間以上2時間未満の場合 | 55,000円/1人 | 41,000円/1人 |
2時間以上3時間未満の場合 | 110,000円/1人 | 83,000円/1人 |
いずれも生産性の向上が認められると加算分が支給される場合があります。
申請時の注意点
助成金について解説していきましたが、いずれの助成金も申請時に注意したい点がいくつか存在します。注意点は以下のとおりです。
- 助成金によって申請期間が異なる
- 事務処理にミスがあると助成金の支給がされない場合もある
- 助成金が支給されるのは「後払い」
各申請期間についてですが、2週間以内に申請が必要なものもあれば、2ヶ月以内の申請によるものなど、助成金によって申請できる期間は異なります。申請漏れなどが起きやすいため、利用を検討している段階でしっかり確認しておきましょう。
申請する助成金の種類によって提出書類が一部異なる場合があります。ひとつでも記入漏れなどがあると審査が通らない可能性があるため慎重に準備しましょう。
後ほど詳しく解説しますが、助成金も補助金も「申請後の後払い」です。支給されるまでに最長で1年かかるケースもあるため、あくまでも「一部の資金を補助してもらう」と言った捉え方で活用することがおすすめです。
助成金と補助金は違う?
助成金も補助金も、返済が不要な金銭を受け取れるといった共通点があります。
しかし、受給の目的や審査の内容が異なるため注意が必要です。
補助金
国や地方公共団体が、資金面を補助するために給付する金銭のことです。地方自治体や経済産業省が管轄し、新規事業や雇用の安定を目的とし運用されています。補助金の支給は審査通過後に行われます。
各補助金の制度に合わせて、予算や件数が事前に設定されているため、申請すれば必ず貰えるといったルールはありません。必要書類を提出する他にも、事業計画書の作り込み具合や、受給の必要性についてしっかりとアピールされている人が審査に通りやすくなっています。
助成金
助成金は、企業の労働環境の改善や人材育成、雇用促進を支援するための金銭です。主に厚生労働省が管轄し、研究や開発については経済産業省が管轄となっています。
申請に通るためには各助成金の要件を満たす必要があります。要件を満たせば給付を受けられるため、補助金よりもハードルが低いです。助成金も補助金と同様、審査が通ったあとに助成金の支給が行われます。
優秀な外国人を雇用するために助成金をうまく活用しよう
- 外国人の雇用で活用できる助成金は豊富
- 補助金と比べて助成金は受給しやすい
- 申請したい助成金の申請期間や受給金額などしっかり把握しておく
- 助成金の種類によって申請期間が異なるので注意が必要
- 申請時の書類の不備があると受給できない可能性も
- 助成金は「後払い」なので一部の資金補助と認識すると良い
今回は外国人の雇用の際に利用できる助成金をご紹介いたしました。日本では優秀な人材がより活躍できる場を増やしていくために、助成金・補助金の制度が充実しています。
より優秀な人材を雇用する手助けのためにも、上手く活用していきましょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。
【参考記事】