「繊維・衣服」業界で外国人技能実習生を受け入れよう!

「繊維・衣服」業界での外国人技能実習生の受け入れは、全産業の中で4番目に多いとされています。日本の「繊維・衣服」業界は人手不足に悩まされていて、外国人技能実習生に支えられて成り立っています。

本記事では「繊維・衣服」業界の現状や外国人技能実習生の受け入れの流れ、職種と作業内容を解説します。

「繊維・衣服」業界の現状

「繊維・衣服」業界はネットショップの普及が高まり、需要が大きくなっています。そんな中、「繊維・衣服」業界の内情はどのようになっているのでしょうか。現状としては次のようなものがあります。

  • 人手不足
  • 技能実習生への依存
  • 不正行為の多発
  • 不正行為防止の取り組み

それぞれ、どのような状況なのか具体的に見ていきましょう。

人手不足

「繊維・衣服」業界は人手不足に悩まされています。需要が高まっているため、市場に送り出す製品を多く出さなくてはいけません。高い技術を保ちながら低コストで製品を作り出すには人手を不足させない必要があります。

しかし、労働人口の高齢化が高まり、人手をつなぐのが困難になってきています。ここで技能実習生の力を借り、なんとかなっているという企業は多いです。

技能実習生への依存

「繊維・衣服」業界は労働人口の減少に伴い人手不足となり、技能実習生に助けられています。しかし、技能実習生に依存してしまっているというのも現状です。「繊維・衣服」業界では、約6,000企業が約30,000人の外国人実習生を受け入れています。

これは全産業の中でも4番目に多い人数です。新型コロナウィルスのような事態では、外国人技能実習生の受け入れも難しく、技能実習生に依存している産業は打撃を受けるでしょう。

不正行為の多発

出入国在留管理庁 平成30年の「不正行為」について

「繊維・衣服」業界は不正行為の発生が多いとされています。平成30年に法務省出入国管理庁が指摘した104団体の内、「繊維・衣服」業界は46機関を占め、約半数です。不正行為とは、主に次のような事柄です。

  • 最低賃金・割増賃金不払い
  • 違法な時間外労働
  • 偽変造文書などの行使・提供
  • 名義貸し

不正行為を行うと、外国人技能実習生の受け入れを停止させられるなどの罰則がある場合もあります。外国人技能実習生の受け入れを考えている場合は、これらの不正行為を発生させないよう十分注意しましょう。

それでは、なぜ「繊維・衣服」業界で不正行為が発生してしまいやすいのでしょうか。それは、1990年以降のファストファッションの流行がきっかけです。ファストファッションは「安く」「大量に」衣服を生産するのが特徴です。

国内の工場では、海外工場よりも高品質でトレンドに合った製品を生み出す流れとなりました。そのため小規模な事業所が増え、めまぐるしく変化する市場環境に対応しつつ極限のコストを実現させようとする試みが労働環境を劣悪なものへと導いてしまったのです。

不正行為防止の取り組み

ある企業が2019年に不法行為防止への取り組みについて発表しました。アパレルメーカー1つにつき製造工場での外国人技能実習生への不法行為が発生した場合、生産・取引の中止をするというものです。

また、外国人技能実習生の実態調査や社員による工場訪問も取り組みの一つとして挙げました。中には工場訪問を拒む取引先もあったようです。このように、業界内で不法行為防止のための取り組みが増え、技能実習生の労働環境が改善される動きが見られます。

技能実習生 受け入れの流れ

外国人技能実習生の受け入れには上限があります。1年間に受け入れられる人数は、常勤職員数が2人であれば外国人技能実習生も2人、常勤職員数が3~30人であれば外国人技能実習生は最低3人まで受け入れ可能です。

技能実習制度とは外国人が日本の技術を学び、母国に持ち帰るという制度です。そのため同じ人材が長く働くというものではありません。技能実習生を受け入れるには、事前に実習計画を作成し、監督省庁に提出する必要があります。

技能実習生を受け入れてからは、その実習計画に沿って実習を行います実習期間は職種によって異なり、技能実習1号・2号・3号それぞれの基準を満たすたびに移行し、最大で5年間実習生として受け入れることができます。

技能実習生を受け入れるまでの準備には書類の作成や提出、法令で定められた講習の実施などさまざまなものがあります。受け入れ企業側で全てを行うのはとても大変なので、監理団体という外部の専門機関へ委託するのがおすすめです。

監理団体に委託して外国人技能実習生を受け入れる流れは次の通りです。

  1. 任意の監理団体に加入する
  2. 現地(外国)で外国人の面談をする
  3. 現地(外国)で外国人向けに教育・講習を行う
  4. 日本に入国
  5. 監理団体にて外国人向けに講習を行う
  6. 外国人技能実習生を受け入れる

監理団体に委託することで受け入れ準備はミスなくスムーズに実施できます。企業側にとって本業に集中しながら人手不足を補う準備ができるのがメリットです。

技能実習「繊維・衣服」の職種と作業内容

厚生労働省によると「繊維・衣服」業界には紡績運転や織布運転、染色など13の職種が指定されています。そしてさらにこの13の職種は22の作業に分けられます。

外国人技能実習生が挑戦しやすい、あらゆる技術がつまっているので「繊維・衣服」業界は外国人技能実習生のニーズが高い業界と言えます。そのため、外国人技能実習生のニーズにこたえながら人手不足を解消することができます。

紡績運転

紡績運転はさらに「前紡工程作業」「精紡工程作業」「巻糸工程作業」「合燃糸工程作業」の4つの作業に分けられます。

前紡工程作業」綿状の繊維をほどいて短い繊維や余計なものを除去し、繊維の平行度・均等度を上げてスライバーにしてさらに粗糸にする作業です。「精紡工程作業」は精紡機で粗糸を所定の太さに引き延ばし、ひねって糸にする作業のことを言います。

巻糸工程作業」は、糸巻機で精紡管糸の欠点を取り除いてチーズやコーンに巻き戻す作業です。「合燃糸工程作業」は2本以上の糸を引いて揃え、均等にひねり加え強伸度のある糸や特殊な見た目の糸を作る作業のことを言います。

織布運転

織布運転は「準備工程作業」「製織工程作業」「仕上工程作業」の3つの作業に分けることができます。準備工程作業」は整経・糊付・経通し・緯巻きの作業です。「製織工程作業」は、準備工程で作った経糸・緯糸を織機で織る作業のことを言います。

仕上工程作業」は製織工程作業で完成した織物を検反・修正・格付け・折り畳み・ロール巻き・荷造りする作業で、まさに仕上げの作業です。

染色

染色は「糸浸染」「織物・ニット浸染」の2つの作業に分けられます。糸浸染」は浸染用の機械を使い、染料を溶かした染色液に染色する糸をひたして助剤と温度の働きによって繊維に染料をつける作業です。

織物・ニット浸染」は、浸染用機械で染料を溶かした染色液に織物・ニットを浸して助剤と温度の働きで繊維に染料をつける作業です。

ニット製品製造

ニット製品製造では、「靴下製造」「丸編みニット製造」の2つの作業があります靴下製造」は、靴下編立て仕様書をもとに生地を靴下の形状に編み立てる方法で靴下を作る作業です。

丸編みニット製造」は、編立て仕様書をもとに丸編機を使って生地を円筒状に編んでいく方法で丸編みニットを作る作業です。

たて編みニット生地製造

たて編みニット生地の製造は、編み立て仕様書をもとにたて編機を使用してたて編みニットを作る作業のことを言います。たて編みは、整経されて平行に並べられた複数の経糸によって縦方向に編み目を作っていく編み方です。

生産性が高く、織物と緯編みの中間のようなカッチリとした編地を作ることが可能です。緯編みと比べると薄手の生地が多く、長繊維の糸を使うことが多いです。

婦人子供服製造

婦人子供服製造は、婦人子供服の既製品を製造する作業です。型紙に沿って生地を裁断し、裁断された衣服のパーツとなる部分をミシンなどで縫製します。

アイロン・プレス操作を行いながらきれいに仕上げます。最後はしっかり製品検査を実施し、完了です。

紳士服製造

紳士服製造は、紳士服の既製品を製造する作業です。型紙に従って生地を裁断し、裁断された衣服のパーツとなる部分をミシンなどで縫い上げます。

アイロン・プレス操作を行いながらきれいに仕上げます。最後はしっかり製品検査を実施し、完了です。

下着類製造

下着類製造は下着を製造する作業です。下着類の部品となる生地を2点千鳥ミシン・4点千鳥ミシン・本縫い1本針ミシン・本縫い2本針ミシンなどといった多種類のミシンを使用して縫い上げます。

縫製・仕上げ、最後に製品検査を行って下着を製造します。

寝具制作

寝具製造は、掛け布団や敷布団などの寝具を製造する作業です。測定器具・裁断用機械器具・縫製用機械器具・綿入れ用機械器具・仕上げ用機械器具など多くの器具を使用して製造します。

生地の採寸から裁断、側縫製や綿入れ、綿入れ口縫製やキルティング加工などを施します。

カーペット製造

カーペット製造は、「織じゅうたん製造」「タフテッドカーペット製造」「ニードルパンチカット製造」の3つの作業に分かれます。織じゅうたん製造」は12尺巾巾以上の織じゅうたん織機を使用し、パイル糸・地経糸・緯糸・締経糸で製造する作業のことを言います。

タフテッドカーペット製造」は、4m巾以上のタフティングマシンを使用し、パイル糸でタフテッドカーペットを作る作業です。「ニードルパンチカット製造」は、2m巾以上のニードルパンチ機を使用し、ウェブ用素材でニードルパンチカットカーペットを作る作業です。

帆布製品製造

帆布製品製造は、テント・シート・コンテナバッグなどの帆布製品を製造する作業です。帆布またはそれと同等の化学繊維材料でできた生地を使用します。生地を裁断して縫製し、製造します。

キャンプやBBQの流行から需要が上がってきました。耐久性が高い生地なので、アウトドア製品に多く使われています。

布はく縫製

布はく縫製とは、ワイシャツを製造する作業です。各種布はく縫製品に使う生地を型紙に沿って裁断し、縫製機械を使って製造します。襟・カフス・ポケット・前身ごろ・袖・脇を縫い合わせて作っていきます。

特に前身ごろは柄が合うように縫い合わせるので、高度な技術を求められます。最後にボタンを正確な位置に取り付けて完成です。

座席シート縫製

座席シート縫製とは、自動車の座席シートを製造する作業です。総合送りミシン・上下送りミシンなどの工業用ミシンを使って原反と副資材で作られた生地と部品を手順書に従って縫い合わせます。

フロントシートやリアシート、ヘッドレストやアームレスト、ドアトリムやコンソールなどの自動車の座席シート関連を取り扱います。

【まとめ】正しい知識で「繊維・衣服」業界の技能実習生を受け入れよう!

ここまで、「繊維・衣服」業界の現状や外国人技能実習生の受け入れの流れ、職種と作業内容を解説してきました。「繊維・衣服」業界での外国人技能実習生受け入れは、ニーズが高く、人手不足に悩まされている業界は技能実習生に依存している実態があります。

このことからも不法行為が多く発生していますが、最近は企業内で不法行為を防止するための取り組みも行われています。正しい知識をもって「繊維・衣服」業界で技能実習生を受け入れ、互いに気持ちよく働きましょう。

海外人材TIMES 技能実習で認められている「繊維・衣服分野」とは?

https://kjtimes.jp/recruit/technical-intern-training/0014/

企業単独型移行支援&技能実習ビザ請負センター 繊維衣服で外国人技能実習生を受け入れるための要件

https://samurai-law.com/ginojishu/gana04/

外国人労働者ドットコム 【技能実習制度】「繊維・衣服業」の外国人労働者の受入れについて解説

https://www.gai-rou.com/training/%E3%80%90%E6%8A%80%E8%83%BD%E5%AE%9F%E7%BF%92%E5%88%B6%E5%BA%A6%E3%80%91%E3%80%8C%E7%B9%8A%E7%B6%AD%E3%83%BB%E8%A1%A3%E6%9C%8D%E6%A5%AD%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%A4%96%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E5%8A%B4%E5%83%8D/#%E6%8A%80%E8%83%BD%E5%AE%9F%E7%BF%92%E3%81%AE%E3%80%8C%E7%B9%8A%E7%B6%AD%E3%83%BB%E8%A1%A3%E6%9C%8D%E6%A5%AD%E3%80%8D%E3%81%AE%E8%81%B7%E7%A8%AE%E3%83%BB%E4%BD%9C%E6%A5%AD

外国人労働者 アクセス 技能実習制度 繊維・衣服関係の業種と作業内容

https://gai-access.com/seni2/

出入国在留管理庁 平成30年の「不正行為」について

https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/nyuukokukanri07_00226.html