技能実習農業とは?採用するメリットや要件を解説

農業分野においては、労働者の高齢化などに伴う人手不足を補うために、外国人技能実習生の受入れが盛んに行われ始めています。

外国人技能実習制度とは、日本で外国人の労働者を「技能実習生」として受け入れる制度のことです。受け入れた外国人に実際の労働を行ってもらい、スキルや知識を修得し、帰国後に母国の経済発展に役立ててもらうという狙いもあります。

この記事では、技能実習生の受入れに必要な要件や受入れの際の注意点などを中心に、技能実習農業について詳しく解説していきます。

技能実習農業とは?

技能実習「農業」とは、農業分野における外国人技能実習制度のことを指します。

外国人技能実習制度とは、日本で外国人の労働者を「技能実習生」として受け入れる制度のことです。発展途上国から実習生を一定期間受け入れ、実際の労働を行ってスキルや知識を修得してもらいます。期間満了後は帰国し、母国の経済発展に役立ててもらうという制度となっています。

もちろん「技能実習生」から「特定技能第1号」への切り替えを行えば、最長で5年間雇用を続けることも可能です。

技能実習農業で採用できる外国人の要件

技能実習農業では、発展途上国の外国人を日本で受け入れることができます。

実際には、「農業協同組合」や「事業協同組合」などの監理団体を通した「団体監理型」によって外国人の受け入れが可能となります。

ここでは、技能実習農業の受け入れ方法や、任せられる業務について詳しく解説していきます。

技能実習農業の受入れ方法

実習先は「団体監理型」で外国人の受入れを行います。

実習生の入国が完了したあと、実習先となる農業者は監理団体のサポートを受けて技能実習生と雇用の契約を結びます。契約を結ぶ際、実習先の実習実施者は技能実習計画を作り、外国人技能実習機構からの認定を受ける必要があります。

また、実習先には技能実習計画の作成や進捗状況の管理、監理団体との連絡相談などを任せられる技能実習責任者を配置しなければなりません。

技能実習生の場合は「特定技能第一号」とは違い、日本語能力や業務に対するスキルについては基準が設けられていません。実習生が入国する前に、事前にどのくらい日本語が話せるのか、農業分野についてどういった知識やスキルを持っているかなどを確認しておくことが大切です。

主な手続きの流れは以下の通りです。

確認後は必要に応じて研修の時間を設けたりと、準備をしておく必要があります。

任せられる業務

技能実習生に任せられる業務は以下の通りです。

  • 耕種農業における施設園芸、畑作・野菜、果樹
  • 畜産農業における養豚、養鶏、酪農

上記以外にも、農畜産物を使用した加工作業なども関連業務として任せることができます。また、販売作業も技能実習として行うことが可能な場合もあります。

実習先の業務がどこまで任せられるか知りたい場合には、農業協同組合などの監理団体や、農林水産省のお問合せ窓口などに相談してみましょう。

技能実習農業のメリット

技能実習農業で外国人実習生の受入れを行う際には、以下のメリットがあります。

  • 人手不足が解消されて生産性が上がる
  • 若くて誠実な人が多い

日本国内で農業分野における人手不足は深刻な状況であると捉えられています。従事する人も高齢者が多く、後継者も不足していました。しかし、技能実習農業によって外国人実習生が増え、労働力を確保することによって人材不足の解消が見込まれています。

技能実習は特定技能第1号に切り替えを行うことによって、最長5年間雇用契約を続けることも可能です。人手が増えれば生産性もあがり、農業分野の発展に繋がることも期待されています。

また、技能実習生として日本に入国する外国人のほとんどが、二十代〜三十代の若者です。外国人実習生は発展途上国出身のため、経済的余裕がなく働き口として実習生になることを選んで日本に来ています。

すぐに別の仕事が見つかるといった環境ではないため、長く勤められるようにと誠実に業務に向き合い、仕事を覚えようとしてくれます。実習先の日本人とも良好な関係を築けるよう、積極的な人がほとんどです。実習生によって職場の雰囲気が良くなり、生産性が上がることも期待できます。

技能実習農業の注意点

技能実習生を農業分野で受け入れる場合には、メリットもありますが注意しなければならない点もあります。

主に注意しなければならない点は以下の通りです。

  • 外国人が働ける環境が整っているか
  • 日本に在留できる資格を持っているか

技能実習生の中には、日本語を勉強中の人や、日本に住むことに慣れていない人などもいます。実習生が安心して業務に専念できるように、快適な居住地を準備することも大切です。

居住地については、以下の要件を満たしたものを準備する必要があります。

1.宿舎は火災による危険のある場所、衛生上有害な作業現場、被災の恐れがある場所などの付近を避けること

2.寝室が2階以上にある場合は、簡単に屋外に通じる階段を2カ所以上設けること

3.十分な消火設備を設置していること

4.寝室は一人一人の十分なスペースを確保し、日当たりが良く、採暖の設備を設けること

5.就眠時間が違う2組以上の実習生がいる場合、寝室を別にすること

6.食堂又は炊事場は衛生環境を整備し、病害虫を防ぐこと

7.トイレ、洗面所、洗濯場、浴場を設置し、清潔にすること

8.宿泊施設が労働基準法に基づく「事業の附属寄宿舎」に該当する場合は、所定の届出等を行っていること

農林水産省公式パンフレット「農業者の皆様へ外国人技能実習制度について~特に押さえておくべきポイントとは~」

故郷を離れて一人で外国に働きに来ており、言葉もほとんど通じないところで住むのは相当なストレスとなります。メンタル面のサポートも欠かさず行い、職場で独りになるようなことは絶対に避けねばなりません。

他国の文化や風習、言葉を否定するなどの行為は差別に当たる可能性があります。お互いが気持ちよく働ける環境にしていくためにも、良好な関係を築いていきましょう。

また、重要になるのが日本に在留できる資格(ビザ)を持っているかどうかという点です。農業分野で在留できる資格がなければ、雇用自体が白紙に戻ります。

受け入れた実習生が在留資格を持っていなかったことを実習先が把握していなくても、確認を怠ったことに対して過失を問われる可能性があるため注意しましょう。

まとめ

  • 特定技能実習農業は監理団体を通じて雇用契約を結ぶ
  • 人手不足の解消となり長期間働いてもらえる
  • 実習生には誠実な人が多く職場環境がより良好になる可能性もある
  • 実習生の精神面や生活面のサポートが必要不可欠
  • 在留資格を持っていないと雇用できないため注意
  • 任せられる業務の範囲が不明瞭な場合は監理団体や農林水産省に相談する

今回は特定技能実習農業について解説していきました。

農業は私たちの生活を支える大切な産業分野です。人材不足を特定技能農業の活用によって解消し、生産性を上げることも期待できます。

しかし、在留資格の有無や特定技能実習計画など、注意しなければいけない部分が沢山あります。不安に感じることがあれば、農林水産省の問い合わせ窓口や、農業協同組合などの監理団体に相談しながら手続きを進めていきましょう。

最後までご覧いただきありがとうございました。

【参考記事】

農林水産省公式ホームページ

農林水産省「農業分野における外国人受入れについて」

農林水産省公式パンフレット「農業者の皆様へ外国人技能実習制度について~特に押さえておくべきポイントとは~」