特定技能農業とは?外国人を雇用する際の手続きやポイントを解説

人材不足が深刻な産業や、将来的に人材不足が問題になる可能性が高い産業のために「特定技能」という制度が2019年から施行されました。特定技能とは、外国人の雇用を後押しし、人材不足の解消を目指す制度のことを指します。

人材不足が問題視されている産業の中には「農業」も含まれており、特定技能の制度を利用して特定技能外国人の雇用を農業分野でも行えるようになりました。これにより農業分野で活躍できる外国人労働者が増え、人材不足の解消が期待されています。

この記事では、今後外国人雇用を検討している人に向けて、特定技能農業の概要や手続きのポイントなどをわかりやすく解説していきます。

特定技能農業とは?

農業を生業とする人々の高齢化や、従業員や後継ぎとなる人材の不足などによって、農業者は減少傾向にありました。こうした人材不足を解消するため、新しく施行されたのが「特定技能」という制度です。

この「特定技能」と呼ばれる新しい在留資格によって、外国人労働者の受入れが農業分野でも行われるようになりました。「特定技能」には特定技能第1号と特定技能第2号の2つの種類があり、受入れが可能な人数の上限は5年間で345,150人となっています。

農業分野での受入れが可能な資格は、特定技能第1号となっています。最長5年間の受入れが可能で、通年で5年間雇用することもできます。1年のうち繁忙期となる半年間だけ従事してもらい、残りの半年間は帰国してもらうなどの調整も可能です。

雇用形態も選べて対応可能な業務も種類が豊富なため、特定技能制度を上手く活用すれば人材の確保だけでなく生産性の向上も見込めます。まずはどのようなかたちで雇用が行えるのかを理解するために、次の章で特定技能農業の雇用形態を確認していきましょう。

特定技能農業の雇用形態

特定技能農業の雇用形態は2種類あります。

  • 直接雇用
  • 派遣雇用

直接雇用は、農業者が受入れ機関として外国人の雇用を直接的に行うことを指します。

直接雇用する場合には農業特定技能協議会に入会し、過去5年以内に労働者を6カ月以上雇用した経験がなければなりません。この2つの要件を満たしていれば、地方出入国在留管理局で「契約書」を必要な書類と共に提出することによって直接雇用ができます。

一方で派遣雇用は、派遣元となる派遣業者が受入れ機関となり、外国人材を農業者に派遣してもらう形態を指します。

(出典:農林水産省「農業者向けパンフレット」

派遣での雇用を行うためには、過去5年以内に労働者を6カ月以上雇用した経験があれば問題ありません。もしくは、派遣先責任者講習を受けた者を派遣先責任者に選任している経験がある必要があります。外国人材を派遣事業者から派遣してもらう場合には、派遣事業者(派遣元)と労働者派遣契約を結ばなければいけません。

要件を満たして「派遣先事業者誓約書」を派遣事業者に提出すると、派遣雇用ができるようになります。

特定技能農業での対応可能業務

外国人材が対応できる業務は、以下の通りです。

  • 耕種農業全般の作業
  • 畜産農業全般の作業

「耕種農業全般」では、畑作・野菜作業、果樹作業、施設園芸作業や、農産物の集出荷、選別などを含みます。「畜産農業全般」では、酪農、養豚、養鶏などの飼養、畜産物の集出荷、選別などが業務に含まれています。

上記の作業以外にも、上記の作業に関連する業務を日本人労働者が行っている場合、同じ内容の業務を行うこともできます。具体的にどのような内容の業務を任せていいのか判断に迷う場合には、農林水産省の問い合わせ窓口などに確認してみましょう。

いずれの業務も報酬(給与)の支払い額は、同じ業務を行う日本人労働者と同等以上となります。より詳細な内容は特定技能制度に関するQ&Aにも記載されているので、雇用を検討している場合は一度目を通しておくと良いでしょう。

特定技能農業で外国人を雇用する方法

ここでは、実際に雇用する際に必要となる手続きについて詳しく解説していきます。

採用に際して事業者に必要となる手続き

事業者が外国人材を雇用するために必要になる手続きは以下の2つです。

  • 外国人支援を行う
  • 農業特定技能協議会に入会する

特定技能外国人の雇用を行う場合、業務だけではなく、日常生活においても支援を行う必要があります。すべての支援については事業者が行うこともできますが、特定外国人の受入れ実績がない場合には「登録支援機関」への委託が必須となります。

「登録支援機関」は、特定技能外国人の支援を事業者に代わって行ってくれる機関となります。受入れ実績の有無の他にも、生活支援の相談ができる役員や職員がいない場合も委託が必要となります。受入れ実績があり、支援の計画や実施が可能な場合には、委託するか否かを選択することが可能です。

特定技能外国人を雇用したあと、事業者は雇用してから4か月以内に農業特定技能協議会に入会しなければなりません。農林水産省公式ホームページから入会することができます。入会料は0円です。

採用に際して労働者に必要となる手続き

特定技能外国人として農業分野で雇用してもらうためには、特定技能1号「農業」を取得する必要があります。取得の方法は以下の通りです。

  • 技能測定試験および日本語試験に合格する
  • 農業分野の技能実習2号から特定技能第1号(農業)へ移行する

技能測定試験と日本語試験に合格すれば、特定技能第1号の要件として挙げられている「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力を有すること」「一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材であること」を証明することができます。

特定技能1号(農業)を取得するもう一つの手段としては、技能実習2号から特定技能第1号へ移行する方法が挙げられます。技能実習2号とは、技能実習制度に基づいて一定の期間技能実習を行い、要件を満たすことで取得できる在留資格を指します。

要件を満たしていれば、技能実習2号から特定技能1号への移行が可能です。技能実習2号を良好に修了していること」「技能実習での職種・作業内容と、特定技能1号の職種が一致していること」が必要となります。

まとめ

  • 特定技能農業では、人員不足の解消が期待されている
  • 雇用形態は直接雇用と派遣雇用が選べる
  • 特定技能第1号(農業)を取得している外国人材の雇用ができる
  • 雇用するためには農業特定技能協議会に入会する必要がある
  • 外国人支援は支援機関に委託することが可能
  • 特定技能外国人には耕種農業と畜産農業全般の業務を対応してもらえる

今回は特定技能農業について詳しく解説していきました。特定技能をうまく活用すれば、人手不足の解消が可能となり、優秀な人材を雇用することもできます。

農産物や畜産物の出荷時期など、忙しくて人手が足りない期間のみの就業など細かな調整もできるので、雇用する相手とよく相談をしながら就業期間も決められます。在留中の支援の実施も必要となるため、コミュニケーションを取って良好な関係を築いていくのが理想的です。

少しでも興味があれば、農林水産省の公式ホームページで詳しい内容を確認してみましょう。

最後までご覧頂きありがとうございました。

【参考記事】

農林水産省「新たな外国人材の受入れのための在留資格「特定技能」について (農業分野)」

農林水産省「農業者向けパンフレット」

「農業特定技能協議会」入会申込みフォーム(法人用)