技能実習生の勤務時間/労働時間に上限があるということを、考えたことはありますか?勤務時間/労働時間の上限は法律で決められており、違反すると企業側に罰則が与えられる恐れがあります。
これから技能実習生の雇用を考えている企業も、勤務時間/労働時間の上限について把握しておく必要があります。本記事では、技能実習生の勤務時間/労働時間の上限、労働時間管理のポイントと違反した場合にどうなるのかについて詳しく解説します。
目次
技能実習生の勤務時間/労働時間の上限は?
技能実習生の勤務時間/労働時間の上限は、労働基準法にて定められています。自社の考えで労働時間を決めてはいけません。技能実習生を受け入れる際は、労働基準法に勤務時間/労働時間がどのように定められているのか必ず確認しましょう。
労働基準法第32条、第34条、第35条、第36条ほかに定められている技能実習生の勤務時間/労働時間の決まりについては次の通りです。
- 原則として週40時間。1日8時間で、それ以上の超過労働は禁止。
- 労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は60分の休憩が必要。
- 週1日の休日、または4週間を通じて4日以上の休日が必要。
- 農業・畜産・水産業の事業場は労働時間、休憩および休日に関する規定の適用が除外。
- 商業・映画・演劇業・保健衛生業・接客娯楽業で労働者が1~9人の事業場は、週44時間、1日8時間まで労働可能。
- 雇用契約に基づく技能実習生の講習時間は労働時間に含む。(企業単独型)
- 「入国時の講習」 (団体監理型) 終了後、別の講習を義務づける際はその時間は労働時間となる。
- 労働時間の管理は、労働者の出勤日ごとの始業・終業時刻をタイムカードや記録で確認できるようにする。
- 年次有給休暇は6ヵ月以上継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して付与。
参照:厚生労働省「労働基準法(昭和22年4月7日法律第49号)」
技能実習生の受け入れを検討しているのであれば、雇用を開始する前にこれらの規定を把握してください。把握したうえで、技能実習生を何名雇用するべきか検討しましょう。
技能実習生の労働時間管理のポイント
技能実習生の労働時間管理をする際は、あらゆる規定の定めを守ったり、確実な管理をすることが大切です。技能実習生の労働時間を管理するポイントは次の通りです。それぞれ詳しく確認していきましょう。
- 残業は36協定が必須
- 労働時間の管理を徹底
- 法令違反がないかチェック
①残業は36協定が必須
時間外・休日労働、いわゆる残業が必要な場合には、「時間外・休日労働に関する協定/36協定」を締結しておく必要があるので注意しましょう。「36協定」は、労働基準監督署に届け出ます。「36協定」を届け出ていても、次の限度基準があるので確認しておきましょう。
- 超過業務が発生するような作業計画をせず、時間外労働をする作業内容は細分化された業務範囲を決めておく。
- 1日・3ヵ月以内・1年間と労働時間の区分に対して、時間外労働協定を行う。
- 延長時間は、一般労働者の場合:1週間15時間/1ヶ月45時間/1年360時間
- 1年以下の労働者の場合:1週間14時間/1ヶ月42時間/1年間320時間
- 特別な事情がある場合、特別条項付き協定を結んで延長時間で働ける。
- 時間外労働に対しては、別途割増賃金率を定める必要があり25%を超える賃金率とする。
- 建設事業、自動車運転、新技術・新製品の研究開発などの業務に対しては、上記の限度基準の対象外。
「36協定」を締結しているからと言って、外国人技能実習生を好きなだけ働かせることができるというわけではありません。上記の限度基準があるので、当てはまっている箇所がないかしっかり確認しましょう。
②労働時間の管理を徹底
雇用主は、従業員ごとに労働日の始業開始時間と就業時間を確実に記録しなければなりません。2019年4月に施行された改正労働基準法により、企業による労働時間の管理がより厳格に運用されなくてはいけなくなりました。
労働時間の管理は、自己申告制と勤怠システム(タイムカード)などで行っている企業がほとんどでしょう。勤怠システムの場合はさほど問題ありませんが、自己申告制であれば申告ミスや改ざんが行われる可能性もあります。
雇用主は確実に労働時間の管理が行われているか、定期的にチェックしましょう。
③法令違反がないかチェック
技能実習生の勤務時間/労働時間を管理するとき、法令違反がないかのチェックはとても大切です。日本人労働者と同様に、技能実習生においても労働基準法・最低賃金法・雇用保険法などが適用されます。
労働基準法では、労働条件面での国籍の差別が明確に禁止されているので、外国人だから少しぐらい法令を違反しても良いという軽い気持ちで雇用してはいけません。外国人技能実習生を受け入れる企業は、双方で気持ちよく働ける環境を整えましょう。
労働基準法違反したらどうなる?
日本人労働者でも外国人労働者でも労働基準法に違反したら、原則企業に罰則が与えられます。たとえば「36協定」を締結せずに時間外・休日労働をさせた場合は、原則違法で罰金が発生します。
万が一労働基準法に違反した場合にどのような罰則があるのか、また予防するにはどうしたらいいのかを確認していきましょう。
①罰則
36協定を締結しないまま技能実習生に時間外で働かせたり、勤務時間/労働時間の上限を越えて働かせたりした場合は、原則企業に罰則が与えられます。罰則の内容は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。
そもそも時間外労働、勤務時間/労働時間の上限を越えての労働をさせると、技能実習生の健康被害に影響したり疲労による生産性の低下に繋がります。また、罰則を科せられると企業イメージにも悪影響を及ぼすので管理は徹底しましょう。
②予防法
技能実習生が労働基準法に違反することなく、適切な労働時間で働けるように企業は管理を徹底する必要があります。労働基準法の違反がないようにする予防法は、次の通りです。
- 自己申告制導入時は十分な説明を徹底
- 定期的に法令違反が起きていないかチェック
企業の中には、勤務時間の管理を自己申告制としているところもあります。勤怠システムと違って自己申告制はアナログであるため、ミスが多い勤怠管理法です。
技能実習生の中には、日本語が苦手な人材もいるので、自己申告制の勤務管理について相手が理解しているかしっかり確認しましょう。また、定期的に法令違反が起きていないかのチェックも大切です。
特に自己申告制だと、実際に働いた時間と申告した時間が異なっていることも十分あり得ます。現場単位で実態の乖離がないか、現場の声に耳にも耳を傾けましょう。
【まとめ】技能実習生の勤務時間/労働時間を守って働きやすい環境を整えよう!
技能実習生の勤務時間/労働時間は、受け入れ企業が勝手に決めて良いものではありません。日本での外国人技能実習生の労働は日本の法令が適用され、勤務時間/労働時間についても労働基準法にしっかり明記されています。
「36協定」を結ばず時間外労働や休日出勤をさせるのも違法です。自社の判断で勝手に技能実習生の勤務時間/労働時間を決めるのではなく、必ず法令の範囲内の労働なのかを確認してください。技能実習生の勤務時間/労働時間を守って互いに働きやすい環境を整えましょう。
厚生労働省「労働基準法(昭和22年4月7日法律第49号)」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73022000&dataType=0&pageNo=1
JinjerBlog 外国人技能実習生の労働時間の上限について注意すべきこと
https://hcm-jinjer.com/blog/kintai/foreigntechnicalinterns_attendance/
AKASHI 外国人技能実習生の労働時間の上限と企業が気をつけるポイントを解説
https://ak4.jp/column/foreign-technical-intern-trainee/
フィリピン人材開発機構株式会社 外国人技能実習生の労働時間、休日、時間外労働(36協定)を解説
https://phdo-info.com/holiday/
慶寿のブログ 【要注意】外国人技能実習生の長時間労働の防止、労働基準法令の確認をもう一度!
https://keisu.jp/weblog/ginoujissyusei-roudoukijyunhou/
AgriweB 技能実習生の労務管理に関する各種整備事項と労働・社会保険の適用
https://www.agriweb.jp/knowledge/571.html