人材不足が懸念されている産業分野において、人材の確保や生産性の向上を目的とし外国人労働者の受け入れが進められています。
この外国人労働者の受け入れを行う制度が「特定技能制度」となっており、特定技能第1号などの在留資格を持った外国人労働者を「特定技能外国人」と呼びます。この特定技能外国人の雇用を行う際に、加入が必要になってくるのが「特定技能協議会」です。
「特定技能外国人を雇用したいけど、協議会ってなんだろう?」
「そもそも雇用に対して、協議会への加入は必要なの?」
特定技能制度は何となく知っていても、協議会などについては詳しいことがわからないといった場合がほとんどです。
特定技能制度において定められている産業分野の中には、特定技能協議会への加入が義務付けられている分野もあります。加入を忘れると在留資格(ビザ)の更新が行えなくなったり、交付自体が取り消される場合もあるため注意が必要です。
取り消しなどの事態を避けるためにも、特定技能外国人を受け入れる際には、特定技能協議会について正しく理解し、手続きを行うことが大切です。この記事では、特定技能外国人の受け入れの際に必要となる特定技能協議会への加入について詳しく解説していきます。
目次
特定技能協議会とは?
特定技能協議会とは、それぞれの産業分野で特定技能外国人や、特定技能外国人の受け入れを行っている機関をまとめる役割をもった団体のことです。特定技能に定められている産業分野は14種類あり、各産業分野ごとに協議会が設置されています。
産業分野の中には、協議会への入会を義務付けられている分野もあります。義務になっている分野は「外食業分野」「飲食料品製造業分野」「宿泊分野」「自動車整備業分野」「航空分野」「造船・船用工業分野」です。
協議会では特定技能外国人の保護や受け入れの管理のために、密にコミュニケーションを取るようになっています。特定技能外国人の日常生活や業務が円滑になるよう、日々様々な部分でサポートを実施しています。
特定技能協議会の目的は?
特定技能協議会では、特定技能外国人が業務に集中できる環境を整え、正しい受け入れが行われるように管理していくことを主な目的としています。
例えば、特定技能外国人の受け入れを行う際の労働環境の調査や管理、必要に応じて受け入れ機関への指導を行うこともあります。あくまでも特定技能外国人を守り、日常生活を安心して送りながら業務に専念できるように管理を行っています。
他にも、人員不足が目立つ地域の調査や、倒産した企業からの転職支援、スケジュール調整などの業務も担うことがあるのです。このように、特定技能協議会では外国人の受け入れ準備や管理だけではなく、人員の補充や転職支援に至るまで多岐に渡ったサポートを行っています。
特定技能協議会の加入義務がある分野は?
特定技能によって定められている産業分野は14種類です。種類としては「建設」「介護」「自動車整備」「航空」「宿泊」「農業」「漁業」「造船、造船、舶用工業」「産業機械製造業」「電気、電子情報関連」「ビルクリーニング」「飲食料品製造業」「素形材産業」「外食業」があります。
加入が任意となっている分野もありますが、特定技能協議会への加入が義務づけられている分野もあります。
登録支援機関において、協議会への加入が義務付けられている分野は以下の通りです。
- 外食業
- 飲食料品製造業
- 自動車整備業
- 宿泊業
- 航空業
- 造船、造船、舶用工業工業
登録支援機関は、特定技能外国人の受け入れを行っている機関から委託を受けて日常生活の支援や業務上の支援を代行して行う機関のことを指します。雇用に関する事前のガイダンスや、出入国時の送迎、住居の確保、生活に必要な支援計画、支援実施、定期的な面談や行政機関への報告など、幅広い支援を受け入れ機関に代わって行います。
より詳しく知りたい場合には出入国在留管理庁「特定技能制度」を確認してみましょう。
特定技能協議会の加入手続き
ここでは特定技能協議会への加入に必要な手続きについて解説していきます。
特定技能協議会の加入費用
特定技能協議会への加入には、ほとんどの分野の場合費用はかかりません。しかし、建設分野に限っては加入時に費用の負担が発生します。建設分野では外国人労働者の失踪などが多いとされていることが主な理由です。
建設分野では年会費の他に、後援会費、月額受入負担金の3種類の支払いが必要です。特定技能外国人一人につき、年会費は36万円(3万円/月)、後援会費は24万円、月額受け入れ負担金は1万2,500円〜2万5,000円かかります。
特定技能協議会の加入方法と加入時期
特定技能協議会へ加入する時期としては、特定技能外国人の採用が決定し、在留資格(ビザ)を取得してから4か月以内とされています。特定外国人のビザ取得前に事前申請を行うことはできないため、必ず取得後に手続きを行う必要があります。
加入義務のある分野で手続き漏れがあると、在留資格の取り消しの対象となる可能性があるため注意が必要です。加入を行う場合には、必ず手続きのタイミングを確認し忘れないようにしましょう。
各分野によって加入方法が変わるため、まずはそれぞれの省庁のホームページを確認することがおすすめです。分野ごとに協議会のホームページが作られているため、申請は各ホームページから行うといった流れになります。
「農業」「漁業」「飲食料品製造業」「外食業」は農林水産省、「ビルクリーニング」「介護」は厚生労働省、「素形材産業」「産業機械製造業」「電気・電子情報関連産業」は経済産業省、「宿泊業」「航空業」「自動車整備業」「造船・造船・舶用工業」「建設業」は国土交通省といった各省庁が管理しています。
特定技能協議会に加入しなかったら?
特定技能協議会への加入は、2人目以降の受け入れの場合は不要となります。しかし、1人目の場合は義務付けられている分野については加入が必須です。
もし、加入を忘れてしまったり、手続き漏れがあった場合には在留資格の認定が下りず採用取り消しとなる場合があります。他にもビザの変更や更新の手続きが一切行えなくなるなど、ビザが交付されなくなるため注意が必要です。
先述した通り協議会への加入は事前に申請が行えないものになっているため、必ず手続きのし忘れがないように細心の注意を払いましょう。
まとめ
- 特定技能は14種類の分野に分かれている
- 分野ごとに協議会が作られており、加入が義務付けられている分野もある
- 加入手続きは在留資格を取得してから4か月以内に行う
- 加入の手続きは事前申請が行えないため注意が必要
- 加入を行わなかった場合ビザの不交付となる場合もある
- 登録支援機関によっては加入が不要なケースもある
- 手続き方法は必ず各省庁のホームページを確認する
今回は特定技能協議会について解説していきました。特定技能外国人の受け入れを行う際、採用した外国人が日本で安全に暮らし、業務に集中して取り組めるよう調整や管理を行うのが特定技能協議会の役割です。
外国人労働者と良好な関係を築き、長く働いてもらえるようにするためにも加入を義務付けている分野もあります。
登録支援機構に委託する場合は、登録支援機構が協議会へ加入しているかを確認が必要となります。委託せずに雇用する場合にも、加入して正しい雇用が行われるように準備することがなによりも大切になります。書類の作成にも注意が必要となるため、手続きは丁寧に行っていきましょう。
【参考記事】