日本人の食卓には欠かせない魚ですが、気候の変動などによって漁獲量も変動し、年々値段が上がる魚も多くなってきています。値段高騰の背景には、近年の気候変動はもちろん、漁業の担い手不足が原因となっていることも考えられるでしょう。
そこで今回は、特定技能における漁業の概要や業務内容、受け入れ時の要件についてご紹介します。これから、外国人の受け入れを検討している方はぜひ参考にしてみてください。
目次
特定技能における漁業とは
ここでは、特定技能における漁業の概要や現状についてご紹介します。
漁業の概要
特定技能における漁業とは、2019年4月に出入国管理法が改正されたことによって、漁業や水産業においても外国人特定技能人材の受け入れが可能となった資格のことを言います。「特定技能」の在留資格により、漁業や水産業分野における人手不足の緩和が期待できるでしょう。
また、特定技能分野では受け入れの上限人数が設定されており、在留資格の特定技能号では、5年間で最大34万5,150人とされています。そのなかでも、漁業分野では最大9,000人の外国人受け入れを予定しています。
一方、特定技能外国人の受け入れがスムーズに進んでいるとは言えません。出入国在留管理庁の調査によると、2022年6月末時点での特定技能1号における在留外国人の人数は8万7,471人です。達成率は約25.3%で、漁業分野においては1,050人となっています。
5年計画も残すところ1年を切っているのに対し、実際は1割程度に留まっています。さらに、コロナショックによって、海外の多くの国で試験や送り出しがストップしているのも原因のひとつと言えるでしょう。
*参考 特定技能在留外国人数
漁業の現状
日本の漁業や水産業では、後継者不足によって高齢化が深刻化している半面、働き手は過去20年で半減しています。
なかでも問題視されているのは、高齢化と漁業や水産業の生産性の低さです。地方の漁村では50代を若手と認識している傾向にあります。その原因のひとつは、収入の低さと言えるでしょう。
2020年の漁業経営統計調査結果によると、1経営体あたりの漁労収入は796万円となり、前年と比較すると1.2%減少しました。そのうち、漁労支出に562万円かかり、こちらも前年と比較すると2.4%減少しています。
この結果をもとに、漁労収入から漁労支出を差し引くと、漁労所得は235万円となり、前年より2.0%増加していることがわかります。
*参考 漁業経営統計調査結
漁業で特定技能外国人が働く際の業務内容
ここでは、漁業で特定技能外国人が働く際の業務内容についてご紹介します。
漁業
まず、漁業において認められている業務内容をご紹介します。
- 漁具の製作や補修
- 漁具や漁労機械の操作
- 水産動植物の探索
- 漁獲物の処理や保護
- 安全衛生の確保
などが挙げられます。
また、上記の主たる業務とあわせておこなう場合に限り、通常は日本人が従事する以下の関連業務に付随的に従事できます。
- 漁具や漁労機械の点検・換装
- 船体の清掃・補修
- 魚倉や漁具保管庫・番屋の清掃
- 漁船の餌や氷・燃油・食材・日用品・その他の操業や生活資材の仕込みと積み込み
- 出漁の炊事や賄い
- 採捕の水産動植物の生簀における畜養とその他付随的な東食
- 自家生産物や当該生産に伴う副産物を原料や材料の一部として使用する製造・加工・運搬・陳列・販売
- 魚市場や陸揚港での旅客物の選別や仕分け
- 体験型漁業での乗客がおこなう水産動植物の採捕補助
なお、これらの業務のみの従事は認められていないため、注意が必要です。
養殖業
続いて、養殖業において認められている業務内容をご紹介します。
- 養殖資材の製作や補修・管理
- 養殖水産動植物の育成管理
- 養殖水産動植物の収穫や処理
- 安全衛生の確保
などが挙げられます。
また、漁業と同様に上記の主たる業務とあわせておこなう場合に限り、以下の関連業務にも付随的に従事することが認められています。
- 漁具や漁労機械の点検・換装
- 船体の清掃・補修
- 魚倉や漁具保管庫・番屋の清掃
- 漁船の餌や氷・燃油・食材・日用品・その他の操業や生活資材の仕込みと積み込み
- 自家生産物や当該生産に伴う副産物を原料や材料の一部として使用する製造・加工・運搬・陳列・販売
- 魚市場や陸揚港での旅客物の選別や仕分け
- 体験型漁業での乗客がおこなう水産動植物の採捕補助
- 養殖用の機械や設備・器工具等の清掃、消毒や管理・保守
- 鳥獣の駆除や追払、防護ネットやテグス張りなどの養殖場での食害防止
- 養殖水産動植物の餌となる水産動植物や養殖用稚魚の採捕、その他附随的な漁業
- 自家生産物の運搬や陳列・販売
- 社内外での研修
なお、養殖業においても上記のみの従事は認められていません。
漁業で特定技能者を受け入れる際の要件
ここでは、漁業で特定技能者を受け入れる際の3つの要件についてご紹介します。
協議会へ加入すること
特定技能外国人の受け入れができる分野ごとに「協議会」が設置されています。漁業分野でも、特定技能制度の適切な運用を目的とし、水産庁により漁業特定技能競技会が設けられています。
この協議会は、受け入れ機関と漁業・養殖職種の業界団体、水産庁や関係省庁、国際研修協力機構などによって構成されているのが特徴です。
また、協議会への加入手続きは、特定技能外国人材の受入日から4か月以内におこなわなければなりません。一方、2回目以降の企業では、在留資格申請時に協議会の構成員である証明書を提出することによって完了します。
さらに、分野によっては、特定技能外国人の日所的支援や協議会への加入が義務付けられている分野もあります。しかし、漁業分野においては、必ずしも協議会の構成員である必要はありません。
協議会で決定された措置をおこなうこと
協議会への加入後は、協議会で決定された事項に関して必要な措置を取ることが義務となります。
まずは、漁業における決定事項からご紹介します。
- 特定技能外国人の安全性確保
- 受け入れ機関の外国人材における配乗人数にかかる申し合わせ
- 特定技能外国人などの配乗人数の報告
- 受け入れ機関の外国人材引き抜き防止にかかる申し合わせ
続いては、養殖業における決定事項についてご紹介します。
- 養殖業分科会規約
- 受け入れ機関の外国人材引き抜き防止にかかる申し合わせ
ここでいう、養殖産業分科会規約は以下の3つのことを言います。
- 業界団体は、制度の周知徹底と法令遵守の啓発を図る
- 受け入れ機関は、就業規則を作成のうえ、日本人と同等の適用をおこなう
- 受け入れ機関は、事件・事故・離職などが発生した際に、業界団体を通じて報告し経過や再発防止策の報告をおこなう
協議会や構成員に協力すること
協議会や構成員に対して必要な協力をおこなうことも求められます。
必要である協力をおこなわなかった場合は、受け入れ機関としての適合性を満たさず、特定技能外国人の受け入れができなくなる可能性もあるため注意が必要です。
まとめ|特定技能取得で直接雇用も派遣も可能な漁業
今回は、特定技能における漁業の概要や業務内容、受け入れ時の要件についてご紹介しました。
漁業とは、2019年4月に出入国管理法が改正され、漁業や水産業においても外国人特定技能人材の受け入れが可能となった在留資格のことを言います。
業務内容としては、主に漁業と養殖業に分けられます。主たる業務とあわせておこなう場合に限り、通常は日本人が従事する関連業務に付随的に従事できる一方で、関連業務に限った従事は認められていません。
受け入れ時の要件は、協議会への加入や決定された措置をおこない、協議会や構成員に協力することなどが挙げられます。万が一、必要な協力をおこなわなかった場合は、適合性を満たさず、受け入れができなくなる恐れもあるため注意しておきましょう。
【参考記事】
特定技能Online 特定技能「漁業」|制度のポイントとおススメの人材会社を紹介
https://tokuteiginou-online.com/column/fishing-industry/
Global HR Magazine 漁業で特定技能外国人を採用するには?
https://global-hr.lift-group.co.jp/161
特定技能ねっと 漁業分野における特定技能ビザ人材活用
https://sunrize-tokuteiginou.net/gyogyou/