技能実習と特定技能の違いと選び方のポイントを解説!

現在、外国人雇用では、在留資格「技能実習」と「特定技能」での受け入れが主流となっています。2種類の在留資格では、受け入れ条件や対象職種などが異なるため外国人雇用を検討されている場合には「技能実習」と「特定技能」の違いについて雇用前に知っておくことが必要です。

本記事では、「技能実習」と「特定技能」の違いを項目ごとに分けて詳しく説明いたします。また、補足としてコロナ感染拡大が外国人雇用に大きく影響しているため、すでに日本に居住している在留外国人からの雇用や特例措置などについて念頭におくと良いでしょう。

技能実習と特定技能の違いについて

技能実習は、国際貢献を目的とし発展途上国の外国人が日本の技術を学びながら働くことができる制度です。技能実習が2010年に創設されて以来、少子高齢化による働き手の減少に伴い技能実習生の需要が高まり、一方では実習生の失踪問題が、雇用する際の課題となっています。

特定技能は、人手不足解消を目的に産業14分野で外国人が働くことができる制度です。技能実習制度より後、2019年に新しく創設されています。実習を目的とした技能実習とは異なり、即戦力となる外国人を雇用することが可能です。技能実習と特定技能はいずれも日本で就労できる資格となりますが、制度の仕組みや在留資格の条件などが異なるため、対象となる外国人に合わせて選ぶことが必要です。

受け入れ方法の違い

技能実習では、法務省と厚生省による認可法人「外国人技能実習機構 OTIT」を窓口に、海外の送り出し機関と監理団体を通じて雇用を行います。特定技能では、基本的には外部機関を通さずに受け入れ企業が外国人本人との直接雇用ができます。なお、外国人受け入れ業務が自社のみでは対応できない場合には、登録支援機関を活用しサポートを受けることもできます。

では、技能実習と特定技能を活用する際に必要な機関について説明していきましょう。

監理団体とは  

外国人技能実習生を受け入れるために、実習先と技能実習生のサポートを担う営利を目的としない団体です。監理団体の主な役割は、技能実習生の求人から受け入れるまでの各種手続き、受け入れ後の実習先の企業と実習生の管理と指導を行います。

監理団体の選び方では、適切な指導と管理ができる主務大臣が許可した団体を選ぶことが、技能実習事業を成立させるための大きなポイントとなります。

登録支援機関とは

特定技能の外国人を支援計画に基づいてサポートする機関です。支援計画では、事前ガイダンス、出入国の送迎、住居確保、公共機関の活用法、公的手続き、地域社会とのコミュニケーション等、外国人が日本での生活に困らないように支援を行います。

受け入れ企業では、はじめて外国人雇用を行う場合や生活相談に従事した経験のある担当者がいない場合には、登録支援機関に特定技能でのサポートを業務委託することができます。

送り出し機関とは

外国人技能実習生を受け入れ企業に紹介する機関です。送り出し機関の役割は、技能実習生の求人と面接の手配、入国前の日本語学習指導、送り出しの各種手続き、入国後と帰国時のフォーローアップなど、監理団体と連携して技能実習生の支援を行います。

送り出し機関は、政府間の二国間取り決めにより業務を行っています。例えば、フィリピンでは政府機関POEA を活用、ベトナムでは海外労働管理局DOLABを活用、インドネシアでは政府管轄のIPKOLに登録など各国独自の方式があり、雇用する外国人の国籍に合わせて対応が異なります。

在留期間について

受け入れ企業は、在留資格について更新の有効期限や記載内容が’変更した場合の対応など、管理が必要です。また雇用期間については、技能実習または特定技能の在留期間に合わせて雇用計画を立てましょう。技能実習、特定技能の在留期間は、下記の通りです。

  • 技能実習:1号で1年、2号で1年、3号で2年(通算5年)
  • 特定技能:1号で通算5年、2号は制限なし更新は必要 

なお、現在、異例としてコロナ特例措置を活用することができます。入管法で定められた在留期間が、空港の入国制限、受け入れ企業の解雇、倒産などにより延滞した場合、在留資格「特定活動」への移行手続きが可能となっています。

入国時の試験は?

技能実習では、雇用後に実習しながら技能を身に付けていく目的であるため、規程の試験水準は設けられていません。ただし、入国前の監理団体による6ヶ月以内の講習が義務付けられており、講習内容は日本語N5〜N4レベルを目指す場合が一般的です。なお、介護のみ日本語能力N4レベルが設定されています。

特定技能では、日本語能力試験(JLPT)N4レベル以上または 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)A2レベル以上と、対象の14業種の技能試験の合格証明書が必要となります。ただし、技能実習2号から特定技能2号へ移行の場合、試験免除が認められています。

対象業種について

外国人雇用を行う際は、在留資格を選ぶ判断として自社業務に適用する業種であるか確認しましょう。また、技能実習2号を良好に修了した技能実習生は特定技能1号に移行できる仕組みがあり、この場合の条件として同業種への移行が限定されていますので、職種と作業範囲は細かくチェックが必要です。

技能実習の対象職種は、86職種158作業です。(2023年4月時点)

  • 農業関係(2職種6作業)
  • 漁業関係(2職種10作業)
  • 建設関係(22職種33作業)
  • 食品製造関係(11職種18作業)
  • 繊維・衣服関係(13職種22作業)
  • 機械・金属関係(15職種29作業)
  • その他(20職種37作業)
  • 社内検定型(1職種3作業)

特定技能の対象職種は、1号は12業種、2号では建設業、造船・舶用工業の2分野のみとなります。(2023年4月時点)

  1. 介護
  2. ビルクリーニング
  3. 素形材産業・産業機械製造業・電気・電子情報関連産業
  4. 建設業
  5. 造船・舶用業
  6. 自動車整備業
  7. 航空業
  8. 宿泊業
  9. 農業
  10. 漁業
  11. 飲食料品製造業
  12. 外食業

受け入れ人数枠

外国人を雇用する人数枠については、技能実習の場合、常勤職員30名以下の企業は3名、優良企業は6名までとなっています。特定技能では、建設業と介護業以外は人数枠の制限はありません。 

建設業は就労する外国人の合計が、受け入れ企業の常勤職員の人数まで、介護業は事業所単位で日本人の常勤介護職員の総数が上限です。つまり、日本人社員を超える人数は雇用できない規定となっています。

転職の可否

外国人が転職する際の注意点は、在留資格の条件について転職の可否を確認することです。技能実習では、実習先を変えて転職することは認められていません。ただし、コロナ禍の特例措置として、実習先からの解雇や実習期間が修了しても帰国できない場合においては転職が認められるようになっています。

特定技能では、転職が可能です。なお、転職の際は、出入国在留管理庁とハローワークへの各種届出が必要となります。

家族帯同について

外国人雇用において、労務管理として業務面以外に外国人の家族について配慮が必要となります。日本定住を希望する外国人は将来的に家族を呼び寄せて一緒に暮らすことを考えているケースが多く、在留資格の条件となる家族帯同は外国人側からすると大きなポイントとなります。

現状、家族帯同が認められているのは、特定技能2号のみです。

在留資格の選び方のポイント

以下は、技能実習と特定技能で選ぶ際のポイントと注意点です。

  • 自社業務に適用する在留資格の対象職種を確認して選びましょう。
  • 就労が認められていない在留資格で雇用した場合、違法行為として不法就労助長罪になるため気を付けましょう。
  • 技能実習2号の外国人から特定技能1号への在留資格変更で雇用ができます。
  • 技能実習の場合、作業項目が細分化されているため、業務範囲の確認が必要です。
  • 外国人を雇用したい期間と在留期間を照らし合わせて雇用計画を立てましょう。
  • 既に日本に居住している外国人から雇用する際は、技能実習からの移行で雇用できます。
  • 外国人を養成しながら雇用する場合は技能実習、雇用前にある程度の日本語と技能レベルを求める場合は特定技能がおすすめです。
  • 監理団体、登録支援機関を活用する際は、各機関の実績や業務範囲などについて実際に質問相談をしながら選びましょう。
  • 送り出し機関の選択は、適切な監理団体または登録支援機関と連携が可能な機関を選びましょう。

まとめ|適切な在留資格を選びましょう

外国人雇用においては、現在、在留資格「技能実習」と「特定技能」を活用することができます。「技能実習」と「特定技能」の違いは、受け入れ方法、在留期間、試験の合格水準、対象職種、人数枠、転職の可否、家族帯同など、資格条件に合わせて雇用することができます。

なお、現在、コロナ禍の特例として法務省より随時、制度内容の変更が公表され、通常の場合に加えて確認することが必要です。在留資格「技能実習」と「特定技能」の違いを把握して、適任の外国社員の確保に繋げていきましょう。