技能実習生と受入れ企業の間で起こり得る問題と防止策

技能実習制度は2009年の入管法改正で在留資格として新設されました。それ以来多くの外国人が、技術を母国に持ち帰ろうと日本で働いています。しかし、技能実習生と受け入れ企業の間ではよくトラブルが発生し、問題となっています。

両社間での問題はどのようなものがあり、どのように防止すればいいのでしょうか。本記事では、受け入れ企業が起こす問題と技能実習生側が起こす問題、問題発生の防止策などを解説します。

受け入れ企業側が起こす問題

技能実習生は慣れない日本という環境で、慣れない日本語で一生懸命働いています。しかしただでさえ慣れない環境下で働く技能実習生と、対等に向き合っていない企業が残念ながら存在しています。受け入れ企業側が起こす問題は次のようなものがあります。

  • 低賃金、残業代未払い
  • 長時間労働
  • ハラスメント

低賃金、残業代未払い

受け入れ企業が起こす問題のひとつとして、低賃金・残業代未払いという点があります。監理団体に委託している企業に受け入れられる技能実習生は、約2ヶ月間講習を受けます。講習終了後は受け入れ企業に雇用されて日本の労働関係法令の元で働くことに

日本の労働関係法令では賃金は最低賃金以上、残業など時間外労働は割増賃金が支払われることが定められています。しかし、慣れない環境下で働く技能実習生なのをいいことに勤務記録を改ざんするなどして適切な賃金が支払われていないという実態があります。

長時間労働

技能実習生は受け入れ企業に雇用されると日本の労働関係法令の元で働くこととなり、法令には賃金と同様労働時間も定められています。法令では1日8時間、週40時間と決められていて時間外労働をした場合には別途賃金が発生するよう決められています。

しかし、技能実習生が日本での立場が弱いことにつけ込み、別途賃金が課せられないまま違法に長時間労働を強いられているケースも。ただでさえ慣れない環境で精神的にも不安定な状況なのに、このような劣悪な環境だと技能実習生たちは心身共に疲れ切ってしまいます

ハラスメント

技能実習生と受け入れ企業の間では、ハラスメントも問題となっています。日本語でうまく意思疎通ができないなど理不尽な理由で殴られたり隠れてお尻を触られたりパスポートなどを隠されるなど悪質なハラスメントです。

他国で働く孤独な技能実習生につけ込み、ストレスを発散させているのでしょうか。ハラスメントなど行き過ぎた行為は相手が誰であっても決して行ってはいけません。

技能実習生側が起こす問題

一方、技能実習生側が起こしてしまう問題もあります。孤独や心細さ、ホームシックから起こしてしまうのでしょうか。技能実習生側が起こす問題は主に次のようなものがあります。

  • 失踪してしまう
  • 途中帰国してしまう
  • 犯罪を犯してしまう

失踪してしまう

技能実習生が失踪してしまうケースがあります。これにはあらゆる理由があるのですが、多いのが生活が苦しくなり、失踪するケースです。

母国で見た日本の技能実習の募集では、母国でもらえる賃金より遥かに多く夢を持って来日するのですが、日本の物価があまりにも高く、母国へも仕送りをすると手元になかなかお金が残らないという場合が多いです。

また、逆に日本での暮らしが便利すぎるのと賃金が良いため、技能実習の終わりが近づいたときにまだ日本で働いていたいという思いから失踪してしまうケースもあります。

途中帰国してしまう

技能実習生の中には、日本で期間満了が来るまで働くという意思が弱く、途中帰国してしまうケースもあります。家族の病気の発覚、妊娠したため母国で出産したい仕事が辛くて投げ出したいといった理由があります。

突然技能実習生が帰国してしまうと、困ってしまいますよね。突然人手不足が再来してしまいますし、手続きなども大変です。

犯罪を犯してしまう

技能実習生が起こしてしまう犯罪も問題視されています。技能実習生同士の喧嘩が殴り合いまで発展してしまうケースや生活が困窮して万引きや盗みを起こしてしまうケースがあります。お金の貸し借りなども発生しています。

母国より賃金が良いと思って日本で働き始めたのに、日本の物価が母国より遥かに高く、結局生活が困窮してしまう技能実習生が多いのが原因ではないでしょうか。

技能実習生との問題発生を防止するには

技能実習生と受け入れ企業側の問題は、できれば発生させたくないですよね。技能実習生側に防止策を求めるのは難しいので、送り出し機関と受け入れ企業側で防止策を実践していくしか他なりません。

送り出し機関と受け入れ企業側からのケアで、技能実習生が起こす問題も軽減されるのではないでしょうか。有効的な防止策をそれぞれ見ていきましょう。

送り出し機関の防止策

送り出し機関の中では技能実習を希望する外国人を日本に送り出す前の講習で、失踪に関する講義も含めて行っています。そして講義全体の中で技能実習を目指す外国人の本気度を見極め不真面目な態度を取る外国人は不合格となります。

また、失踪にまつわる事例紹介や失踪してしまうとどうなってしまうのかなどを講義で説明します。精神状況が失踪を選ぶまでになってしまわないように、相談することを推進し、外国人を来日させる前に失踪予防に取り組んでいます。

さらに、技能実習生が日本で交通事故を起こさないように日本の交通ルールについても事前にレクチャーしています。その他にも日本で生活するうえで知っておきたいルールやマナーなども講義で説明し、技能実習生が快適に日本で生活し始められるサポートをしています。

受け入れ企業側の防止策

受け入れ企業側では、次の2点について会社全体で理解を深めるのが大切です。

  • 外国人にも日本人と同じ労働環境を
  • 外交人とも信頼関係を築く

外国人であっても、日本人と同じ労働関係法令の元で雇用しなければなりません。低賃金・残業代未払い・長時間労働はあってはならない事態です。会社の一部の人間だけではなく、社内全体でこの理解を深めることが大切です。

また、外国人との信頼関係を築くことで何かあったときに相談してもらえやすい環境を作れます。誰にも相談できずに失踪したり途中帰国したり、犯罪に手を染めることがないように外国人の話もよく聞いてあげられる環境作りが大切です。

技能実習生が問題を解決する方法

技能実習生が窮地に立たされたとき、間違った判断をしてしまう前に対処できる方法がいくつかあります。これらの方法を知らずに失踪や犯罪を犯してしまうこともあるでしょう。技能実習生が対処できる方法は次の通りです。

  • 受け入れ企業と交渉する
  • 労働審判を申し立てる
  • 裁判で戦う

受け入れ企業と交渉する

低賃金や残業代未払い、長時間労働やハラスメントに悩み、失踪や犯罪など判断を間違えてしまう技能実習生も多いです。判断を間違えてしまうと、技能実習生の立場も危うくなります。

契約書やタイムカードなど実際の労働時間の記録、給与明細など証拠を集めた上で企業と交渉し、賃金の支払いを求めましょう。

労働審判を申し立てる

企業と直接交渉してもすんなり企業側が認めてくれないケースももちろんあります。そのような時は、裁判所に労働審判を申し立てましょう。労働審判とは、裁判を行う前に第三者が入って解決を促す方法です。

裁判を起こしたくない企業であればここで調停が成立し、和解できることもあります。調停が不成立となった場合には、審判が下されます。審判に異議を申し立てれば、裁判へ進むことになります。

裁判で戦う

労働審判で異議が申し立てられれば、裁判へ進むことがあります。しかしたいていの場合、労働審判で下された審判が覆されることはないでしょう。裁判を起こすメリットとしては、「付加金」の支払いを受けられる可能性があるという点です。

「付加金」は労働審判で請求できません。「付加金」は残業代などの割増賃金と同額なので、請求額が2倍になります。

【まとめ】技能実習生とのトラブルを回避してお互い気持ちよく働ける環境を作ろう!

ここまで、受け入れ企業が起こす問題と技能実習生側が起こす問題、問題発生の防止策などを解説してきました。技能実習生と受け入れ企業側のトラブルはさまざまなものがありますが、お互いが歩みよれば解決するものばかりです。

技能実習生を送り出す機関も受け入れ企業側もトラブルを回避すべく防止策を実践しているところが多くあります技能実習生が問題を起こしてしまう背景を理解し、互いに気持ちよく働ける環境を作りましょう。

Global HR Magazine 外国人技能実習制度とは?技能実習生を受け入れる際の基礎知識

https://global-hr.lift-group.co.jp/39

AI30 アジア国際事業協同組合 外国人技能実習制度のよく問題点

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ミャンマーユニティ 外国人技能実習生の問題とトラブル防止策3選

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