外国人留学生の採用を検討している方のなかには、手続きが複雑でわかりにくいと感じている方も多いのではないでしょうか。
現在、日本国内では少子高齢化が問題視されていることから、留学生の採用を検討する企業も少なくありません。そして、留学生を新卒で採用することによって、若い人材を確保できます。
そこで今回は、留学生を採用する方法やメリット、気を付けたい注意点について解説します。
目次
留学生を採用する方法
ここでは、留学生を採用する方法として3つの手順からご紹介します。
雇用契約を締結する
まずは、日本人学生の採用時と同様に雇用契約を締結しなければなりません。雇用契約が成立していない場合、留学生は就労ビザが取得できない点に注意が必要です。
しかし、企業側からすると就労ビザが現時点で取れるかどうかわからない留学生に、雇用を約束するのは不安を感じることもあるでしょう。このようなリスクを回避するには、雇用契約書の特記事項に雇用条件のひとつとして、就労ビザ取得の旨を追記しておくと安心です。
在留資格を変更する
続いて、入社が決まると在留資格を留学ビザから就労ビザに切り替える必要があります。しかし、ビザを変更するには、留学生本人が管轄の地方国管理局などで申請しなければなりません。
たとえば、3月に卒業し4月から入社するのであれば、入社の3か月前に卒業見込証明書を発行してもらい、入国管理局の審査を受けるといった流れです。
就労ビザは主に、
- 技術・人文知識・国際業務
- 特定技能
の2種類が存在します。
もっとも一般的なものが「技術・人文知識・国際業務」で、頭文字をとって「技人国(ぎじんこく)」とも呼ばれています。主に、留学生が技術者やオフィスワーカーなどとして働く際に必要なビザです。
たとえば、以下のような職種が含まれます。
- システムエンジニア
- 機械工学技術者
- 企画・経理・営業などの事務職
- デザイナー
- 私企業の語学教師
そのため、単純労働をメインとする業務は認められていません。
一方、「特定技能」は2019年4月に新たに設けられた制度であり、人手不足が深刻化している産業分野での労働力確保を目的に制定されました。
特定技能として認められているのは、以下の14分野です。
- 介護
- 建設
- 造船・舶用工業
- 空港
- 自動車整備
- ビルクリーニング
- 電気・電子情報関連産業
- 素形材産業
- 産業機械製造業
- 宿泊
- 漁業
- 農業
- 印食料品製造業
- 外食業
外国人雇用状況の届出をおこなう
最後に、外国人雇用が決まった企業では、「外国人雇用状況の届出」をハローワークでおこなわなければなりません。届け出期限は、雇い入れ日の翌月10日までと決められています。たとえば、4月1日に入社する場合は5月10日までに手続きを完了させておく必要があります。
この届出を怠った場合は、30万円以下の罰金が科されるため、忘れないように手続きをしておきましょう。なお、届出は新卒社員だけでなく、パートやアルバイトの採用でも必要となるため注意が必要です。
留学生を採用するメリット
ここでは、留学生を採用する際の3つのメリットについてご紹介します。
優秀な人材確保ができる
留学生を採用することで、優秀な人材を確保できる点が大きなメリットです。
2021年卒業の企業外国人留学生採用状況調査によると、全体の34.6%が外国人留学生を採用した、または採用する予定と答えました。2020年と比較すると0.6%増加していますが、ほぼ横ばいの状況です。
ただ、2018年と比較すると21%増加しているため、ここ数年間で採用実績の企業が増加していることもわかります。留学生を採用した目的は、4年連続で「優秀な人材確保のため」が1位となりました。
入社後の活躍ぶりについては、半数以上の57.7%が「活躍している」と回答しました。「普通」と答えた25.2%を合算すると、82.9%が留学生の活躍ぶりを評価していることになります。
職場の活性化につながる
留学生を採用することで、職場の活性化につながる点もメリットのひとつです。
外国人にとって異国の地である日本に留学し、日本企業での就職を希望するケースでは、意識やモチベーションが高い人も多い傾向にあります。そのため、モチベーションが高い意欲的な留学生と仕事をする日本人社員にとっても、よい刺激となり職場を活性化させる効果があると言えるでしょう。
中途社員ばかりの現場に外国人留学生が配属され、率先して業務改善を試みると、周りの日本人社員も刺激され作業効率が上がった例も存在します。
また、日本とは異なる文化で育っていることから、日本人だけでは浮かばなかった新しいアイデアが生まれることも期待できます。新商品や新しいビジネスを展開する際のヒントになる可能性も大いにあるでしょう。
海外進出時の戦力になる
海外進出を検討している企業では、留学生を採用することで海外進出時の戦力になる可能性があります。
現在、日本では少子高齢化や人口減少が進んでいるため、マーケットの縮小が危惧されています。そういったこともあり、アジアをはじめとする海外に進出する人も増加しているのが現状です。
外国人留学生は言葉だけでなく、母国と日本の両方の文化を理解していることから、現地の方と日本企業の間にずれが生じた際も解消し、スムーズな取引が図れるでしょう。また、ネットワークが海外にあることから、正確な情報が入手しやすい点もメリットです。
留学生を採用する際に気を付けたい注意点
ここでは、留学生を採用する際に気を付けたい3つの注意点についてご紹介します。
在留資格を確認する
まずは、在留資格を確認しておく必要があります。
上記でもご紹介したように、外国人留学生を採用する際には、在留資格を確認のうえ適切な就労ビザに変更しておかなければなりません。採用日までに留学ビザから就労ビザに切り替え、許可を得ているか確認が必要です。
万が一、許可を得ていないにもかかわらず働かせていた場合は、不法就労助長罪として、企業側にも処罰を下される可能性があるため注意しておきましょう。
また、就労ビザには有効期限が定められているため、更新時期についても把握しておかなければなりません。企業の担当者は出入国管理および難民認定法についてもある程度理解しておいたほうがよいでしょう。
労働条件を明確にする
続いて、労働条件に関しても明確にしておく必要があります。
外国人留学生を採用すると、日本人と同様に労働基準法を遵守したうえで働いてもらうこととなります。個々で労働条件を提示する際は、書面での提示はもちろん、きちんと明確に説明しておかなければなりません。
ニュアンスの違いによってはトラブルに発展する可能性もあるため、離職を回避するためにも念入りに準備を進めておきましょう。
また、留学生といった理由で不当に待遇を下げるのは違法です。労働基準法では、国籍を理由に労働条件や賃金を差別的に扱うことは禁止されています。留学生の高いスキルや専門性を活かし、企業発展の手助けをしてもらうといった考え方が重要となります。
受け入れ態勢を整える
最後に、留学生を採用する際に受け入れ態勢を整えておく必要があります。
どのような目的で採用するのかを明確にしたうえで、日本人社員の理解も得ておかなければなりません。言葉や文化が異なることによって、認識の違いが起こる可能性もあるため、日本語研修だけでなくマナー研修や上司・部下との定期的な面談も必要と言えるでしょう。
万が一、トラブルに発展した際は社員同士で話し合い、その都度改善していくといった姿勢も必要です。また、「空気を読む」「察する」などの日本独特の暗黙のルールは、基本的に通用しません。指示をする際はしっかりと言葉で伝え、理解できているかも確認しておきましょう。
留学生の採用に関するまとめ
留学生を採用するには、雇用契約を結び在留資格の変更をおこなったうえで、外国人雇用状況の届出をおこなう必要があります。
留学生を採用するメリットとして、優秀な人材確保ができ職場の活性化につながり、海外進出時には戦力になり得る点が挙げられます。
労働条件や在留資格の確認、受け入れ態勢を整えることは怠らないようにしましょう。
<参考記事>
理系採用ドットコム 外国人留学生を新卒採用する際のポイントとは?具体的に必要な手続きも解説
https://techoffer.jp/rikeisaiyo/contents/new-graduates/7200/#i-2
HR NOTE 【外国人留学生の採用を考えている企業様へ】企業にとってのメリット・注意点は?
https://hrnote.jp/contents/b-contents-saiyo-gaikokujinnryuugakusei-181228/
理系採用ドットコム 外国人留学生の採用に必要な手続き
https://techoffer.jp/rikeisaiyo/contents/new-graduates/7200/#i-10
外国人採用サポネット 企業が外国人留学生を採用する方法とは?正社員やアルバイトでの雇用方法を紹介!
https://global-saponet.mgl.mynavi.jp/know-how/6302