近年、自動車整備業の人手が足りず、特定技能で外国人を受け入れたいと考えている企業も多いのではないでしょうか。また、自動車整備業で外国人の受け入れを検討していても、どのように受け入れるのか不安に感じている方もいるでしょう。
そこで今回は、特定技能における自動車整備業の概要や業務内容、受け入れる際の要件についてご紹介します。これから、受け入れを検討している方はぜひ参考にしてみてください。
目次
特定技能における自動車整備業とは
ここでは、特定技能における自動車整備業の概要や現状についてご紹介します。
概要
自動車整備業とは、自動車整備業における人手不足を解消するために定められた制度です。自動車整備の基本業務で即戦力となり得る人材を、外国から獲得することを目的としています。
現在、国内における自動車保有台数はほぼ横ばいとなっており、自動車整備の需要も同程度の水準が保たれると予想されています。一方、自動車整備業界においては人手不足の深刻化が大きな課題と言えるでしょう。
また、特定技能の自動車整備業では、特定技能1号のみ受け入れ可能であり、2号の場合は対象外となるため注意が必要です。特定技能2号に関しては、建設や造船・船舶工業のみの受け入れに限られます。
現状
一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会の調査結果によると、整備要員数は約40万人で前年度と比較すると266人減っていることがわかります。また、整備士数は約33万人で前年度と比較すると5,274人減っており、整備要員数に対する整備士数の割合も減少していると言えるでしょう。
そのうえ、整備要員の平均年齢は46.4歳で、前年度と比較すると0.7歳上昇し高齢化していることが伺えます。このようなことから、今後も整備士不足が懸念されるでしょう。
特定技能において、受け入れ人数の制限は設定されていませんが、特定技能設立の2019年から5年間で、特定技能を持つ外国人の受け入れ上限人数目標は34万5,150人に設定されています。上記のように、人手不足が懸念されていることから、自動車整備業での5年間の受け入れ目標は7,000人となります。
自動車整備業で特定技能外国人が働く際の業務内容
ここでは、自動車整備業で特定技能外国人が働く際の業務内容を大きく3つに分けてご紹介します。
日常点検整備
まずは、日常点検整備です。
日常点検整備とは、道路運送車両法に定められている、日常的に運転をする方が車に乗るたびにおこなうことが義務付けられている点検のことです。
ここでいう、日常点検整備とは以下のようなものが含まれます。
- エンジンルームの確認(ブレーキ液や冷却水、エンジンオイルの量などの確認)
- 車まわりの確認(ランプの店頭やタイヤの点検など)
- 運転席の確認(エンジンのかかり具合や異音有無、ブレーキの利き具合、ワイパーの状況など)
定期点検整備
続いて、定期点検整備です。
定期点検整備も日常点検同様に、道路運送車両法に基づいた法定点検整備です。日常点検整備は車に乗るたびに毎回おこなう必要がある一方で、定期点検整備は一定間隔ごとにおこないます。
車種や用途によって定期点検の時期や項目は異なりますが、具体的には以下のとおりです。
- ステアリング装置(ハンドル操作の不具合を防止する点検)
- ブレーキ装置(ブレーキの利き不良を防止する点検)
- 電気装置(エンジンの始動不良・排気ガス悪化防止の点検)
- 動力伝達装置(走行時の動力電動不良や振動を防止する点検)
- 走行装置(ホイールの脱落を防止する点検)
- エンジン(エンジンの不具合を防止する点検)
- サスペンション(サスペンションの不具合や異音発生を防止する点検)
- 有害ガス発散防止装置(火災発生などを防止する点検)
分解整備
最後は、分解整備です。
分解整備とは、エンジンやブレーキ、ギアボックスなどの重要部分を取り外しておこなう整備や改造のことを言います。自動車の安全性・環境保全につながる部分であることから、日常点検整備や定期点検整備と比較すると高度な技術が求められる整備です。
特定技能外国人であれば、このような分解整備作業にも従事できます。主な内容は以下のとおりです。
- 原動機
- 走行装置(フロン・トアクスルやリア・アクスル・シャフトなど)
- 動力伝達装置(クラッチ、プロペラ・シャフト、トランスミッション、ディファレンシャル)
- 制動装置(マスタシリンダやバルブ類、ブレーキ・チャンバなど)
- 緩衝装置(シャシばね)
- かじ取り装置(ギヤボックスやリンク装置など)
- 連結装置(トレーラ・ヒッチやボール・カプラ)
自動車整備業で特定技能外国人を受け入れる際の要件
ここでは、自動車整備業で特定技能外国人を受け入れる際の2つの要件についてご紹介します。
自動車整備分野特定技能競技会への加入・協力
自動車整備分野特定技能競技会とは、自動車整備制度を適正かつ円滑に運用するために設立された組織のことを言います。主に受け入れ企業や自動車整備事業者団体、登録支援機関、有識者、関係省庁などによって構成されています。
企業が特定技能外国人を受け入れるには、協議会の構成員であることと、協議会の活動に協力することが必要です。
主な協議会の活動については以下のとおりです。
- 特定技能制度の趣旨・優良事例の周知
- 人権問題などの対応策を検討
- 法令遵守の啓発
- 倒産時の転職支援
- 就業構造変化・経済情勢変化の情報把握と分析
- 地域別人手不足の把握と分析
- 受け入れ企業と登録支援機関が構成員である証明
- 適正かつ円滑に運用するための必要情報や課題共有・協議
登録支援機関への支援委託
受け入れ企業は、外国人が日本で問題なく生活が送れるように、支援を提供する必要があります。
義務付けられている支援内容は以下のとおりです。
- 事前ガイダンス
- 出入国時の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 日本語学習機会の提供
- 相談・苦情対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援
- 定期的な面談・行政機関への通報
また、支援は外部機関に委託できますが、適正な支援がおこなわれなかった場合は受け入れ企業側が責任を負わなければなりません。一方、法令基準に適合しており、必要な登録を済ませた支援機関に支援を委託する場合は、義務を果たしているとみなされるため安心できるでしょう。
さらに、自動車整備分野において、登録支援機関に支援を委託する場合は、委託先の登録機関が以下の条件に適合しているかを確認しなければなりません。
- 受け入れ先企業が満たすべき要件1から3を満たしていること
- 1級・2級の自動車整備士もしくは、自動車整備士養成施設で5年以上指導に携わった経験者が所属していること
まとめ|特定技能外国人を受け入れた後は支援が必要
今回は、特定技能における自動車整備業の概要や業務内容、受け入れる際の要件についてご紹介しました。
自動車整備業とは、人手不足を解消するために、即戦力となり得る人材を外国から獲得することを目的とした制度です。
業務内容は、日常点検整備・定期点検整備・分解整備の3つに分けられ、なかでも分解整備は高度な技術が求められます。
受け入れ要件としては、自動車整備分野特定技能競技会の加入・協力や登録支援機関へ支援を委託する必要があります。外部機関への委託も可能ですが、適正な支援がおこなわれなかった場合は受け入れ企業側が責任を負わなければならない点に注意が必要です。
【参考記事】
特定技能Online 特定技能「自動車整備」制度のポイントとおススメの人材紹介会社を紹介
https://tokuteiginou-online.com/column/automobile-maintenance/
Link Up Journal 特定技能「自動車整備」の概要と外国人受入れの条件・注意点について
https://linku-s.com/media/car-mechanic/
KMT.Co,Ltd 特定技能の自動車整備業とは?業務内容や試験日程、協議会についても徹底解説!
https://k-m-t.jp/kmt_list/1909/
特定技能ねっと 行政書士が解説する自動車整備分野での特定技能外国人雇用のポイント
https://sunrize-tokuteiginou.net/employment-points-of-jidoshaseibi/