特定技能制度におけるパキスタン人の、受け入れの歴史自体はまだ浅いのが特徴です。そのため、受け入れ実績の少ないパキスタン人の採用に不安を抱えている企業も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、パキスタンからの特定技能外国人の受け入れ状況や特徴、受け入れる際の流れについて解説します。これから、パキスタン人の採用を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
パキスタンからの特定技能外国人の受け入れ状況
ここでは、パキスタンの概要や特定技能外国人の受け入れ状況についてご紹介します。
パキスタンの概要
パキスタンの正式名称は、パキスタン・イスラム共和国です。面積は79.6万平方キロメートルで、これは日本の約2倍の面積に該当します。
人口は2億2,090万人(2020年)で、首都はイスラマバードです。パキスタンには、パンジャーブ人やパシュトゥーン人、シンド人やバローチ人などといった民族が存在します。
言語は、ウルドゥー語が国語であり、公用語には英語が使用されており、宗教は、国教でもあるイスラム教を信仰している方が95パーセント以上を占めています。
また、パキスタン北部には世界第2位の高峰のK2があり、中央にはインド砂漠、南部には大湿地帯が広がっている連邦共和制国家です。イスラム国家としては世界で2番目の人口を有するのが最大の特徴です。
英領インドからの独立運動の中で、ヒンドゥー教徒地域がインド、イスラム教徒地域がパキスタンとして分離独立しました。1955年に、インド東部のイスラム教徒地域は東パキスタンとなったものの、遠く離れた両地域を宗教のみで統一しておくことは困難で、1977年、東パキスタンはバングラデシュとして分離独立しました。
主な産業は綿工業と農業であり、とくに小麦の生産量は世界第6位の実績を誇っています。そして、輸出産業の柱と言っても過言ではないのが、綿布や既製品です。
さらに、日本より自動車産業が進出していることから、トラックやオートバイなどの製造もおこなっています。そのため、日本で技術を磨いたうえで母国の企業で活躍したいと考えるパキスタン人も少なくありません。なかでも、農業や綿工業産業においては即戦力になることも期待できるでしょう。
*参考 外務省によるパキスタン基礎データ
パキスタンからの受け入れ状況
出入国在留管理庁の調査結果によると、2022年6月時点での在留パキスタン人は2万927人という結果になりました。一方、そのうち技能実習生は3人、特定技能として働いているのは1人です。
パキスタンからは、技能実習制度と特定技能の受け入れが2019年に開始されました。技能実習制度は1号から3号まであり、在留期間は最長5年ですが、特定技能に移行した先は在留期間が延長できます。
技人国(技術・人文知識・国際業務)で働くパキスタン人は3,110人、経営・管理では1,673人が働いており、それほど少なくもありません。
しかし、特定技能におけるパキスタン人の受け入れ実績が少ないのには、以下の要因が挙げられます。
- 歴史が浅い
- 新型コロナウイルス感染症が蔓延した
- メリットがアピールできていない
パキスタンでは人口が多い一方で、国内での就職率はあまりよくありません。そこで、海外での就職を視野に入れる若者も多いのが特徴です。少子高齢化によって人手不足が懸念されている日本においては、パキスタン人の採用がプラスになるでしょう。
パキスタン人の特徴とは
ここでは、パキスタン人に多い3つの特徴についてご紹介します。
イスラム教信者
上記でもご紹介したように、パキスタンは世界第2位のイスラム国家であるため、国民のほとんどはイスラム教信者となります。イスラム教との歴史は長く、信仰が深い方も多いため、採用する際はイスラム教への理解が必要です。
イスラム教に関する主な特徴は、以下のとおりです。
- 1日5回の礼拝
- 約1か月間の断食
- アルコール・豚肉・生ものは食さない
また、信仰の度合いによって対応が異なる場合もあります。しかし、会食の場でアルコールの強要などはおこなわないように気を付けましょう。
コミュニケーション能力が高く働き者
パキスタン人は人懐っこい性格の方が多いため、コミュニケーション能力も高い傾向にあります。コミュニケーションが取りやすいと、お互いに気持ちよく仕事ができるでしょう。
そのうえ、日本人以上と言っても過言ではないほどの働き者です。基本的な休日は日曜のみで年末年始も働き、帰宅後の食事の支度もテキパキとこなしています。
おもてなし精神
パキスタン人は、おもてなしの精神が強いといった特徴があります。誰かをおもてなしする際は、お手伝いやお金の負担まで断ります。
このように、家族をもてなすかのように扱ってくれるため、心を開けばお互いに気持ちよく過ごせるでしょう。
特定技能制度を活用してパキスタン人を受け入れる流れ
パキスタンとは、2019年12月23日に二国間の取り決めを締結しましたが、送り出し体制はいまだ調整中であり、認定送り出し機関についても取り決めによって定められていないため今後の課題とされています。
ここでは、特定技能外国人を受け入れる際のおおまかな流れについてご紹介します。
現地から受け入れる場合
現地から受け入れる場合、まずは求人募集に直接申し込みをおこないます。もしくは、民間の職業紹介事業者に求職依頼をおこなうのも方法のひとつです。
採用したい方が決定すると、雇用契約を締結します。このときに、受け入れ企業が実施する事前ガイダンスや健康診断の受診についても説明しておきましょう。
そして、在留資格認定証明書の交付申請をおこないます。無事に交付されると、続いて在外公館へ提出します。ここで、査証発給がおこなわれると、いよいよ入国です。
入国時には、生活オリエンテーションの受講や住民登録、給与口座の開設や住宅確保などを速やかにおこないましょう。これらの手続きが終わると、受け入れ企業での就労が認められます。
日本国内から受け入れる場合
日本国内から受け入れる場合は、求人募集に直接申し込みをおこなったり、ハローワークや民間の職業紹介事業者に求職依頼をおこなったりして、採用者を決定します。
採用者が決まると、雇用契約を締結し、事前ガイダンスや健康診断受診のご案内をしておきましょう。
続いて、本人より在留資格変更許可申請をおこないます。在留カードが交付されると、入国可能となります。入国時には、生活オリエンテーションの受講や住民登録、給与口座の開設や住宅確保などを速やかにおこないましょう。これらの手続きが完了すると、受け入れ企業での就労が可能です。
まとめ|パキスタン人の特定技能受け入れはこれから
今回は、パキスタンからの特定技能外国人の受け入れ状況や特徴、受け入れる際の流れについて解説しました。パキスタンからの特定技能の受け入れ人数は、2022年6月時点で1人です。在留しているパキスタン人は2万927人ですが、特定技能としては歴史が浅く、新型コロナウイルス感染症が蔓延したうえ、メリットをアピールできていないことが要因として挙げられます。
また、パキスタンは世界第2位のイスラム国家であるため、イスラム教への理解が必要です。基本的には、コミュニケーション能力が高く働き者で、おもてなし精神が強いといった特徴があるため、心を開けばお互い気持ちよく仕事ができるでしょう。
パキスタンとは、2019年12月23日に二国間の取り決めが締結されている一方で、送り出し体制や認定送り出し機関については、現在調整中とのことです。本記事では、基本的な流れについてご紹介しましたが、国ごとによって独自の手続きを設けていることもあるため、詳細が明らかになった際にはきちんと確認しておきましょう。
【参考記事】
出入国在留管理庁 【在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表】
https://www.moj.go.jp/isa/policies/statistics/toukei_ichiran_touroku.html
JITICO パキスタン事情のご案内
https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/jitco-prd-nhp/wp-content/uploads/2022/01/26145306/df0c1808163b5907c79458f54456f26c.pdf
外務省 特定技能外国人を受け入れるまで
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/ssw/jp/introduction/