外国人労働者を検討する際によく聞くワード 「外国人技能実習制度」 。調べてみるものの仕組みが複雑だったり説明が長すぎたり…全てを理解するのが大変ですよね。
このサイトでは、技能実習制度のいろはを簡潔に紹介しています! 一気に制度の概要を網羅したい人は必見です!
目次
外国人技能実習制度の概要
外国人技能実習制度は、1993年に制度化されたものです。
制度の目的は、「日本で培われた技能・技術・知識を開発途上地域へ移転し経済発展に貢献する」ための人づくりへの寄与であり、国際協力推進の意味があります。
技能実習制度の内容は、外国人実習生が日本の企業や個人事業主等(実習実施者)と雇用関係を結び、出身国で習得が難しい技能等を熟達することです。
●1.外国人技能実習生の受け入れ方式
外国人技能実習生を受け入れる方式は「企業単独型」と「団体監理型」の2つがあります。2018年末では企業単独型の受入れが2.8%、団体監理型の受入れが97.2%となっています。
・受け入れ先を「日本の企業」とし海外の現地法人等の職員を直接受け入れて技能実習を実施する方式
・企業単独型で受け入れる場合は海外に事業所を持っている必要がある
・企業が主導となり講習や技能実習日誌の作成等を行う必要がある
・監理団体が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等(実習実施者)で技能実習を実施する方式
・監理団体は、技能実習制度における活動の監督・取り締まり及び受け入れ企業への書類作成・通訳・巡回サポートなどを行ってくれる非営利団体
・団体監理型では、受け入れ先は実習実施者(企業等)ではなく監理団体
企業単独型 | 団体監理型 | |
---|---|---|
受け入れ先 | 企業 | 監理団体 |
実習生 | その企業の海外事業所社員 | 条件に合えば誰でも◎ |
管理費 | 無し | 監理団体に払う必要あり |
手続き・書類作成・講習 | 企業で行う必要あり | 監理団体が代行サポートor 協力作成 |
実習生の面接・選抜 | 企業で行う必要あり | 団体と協力しながら企業が選抜を行う |
●2.技能実習の対象者(区分と在留資格について)
在留資格とは、外国人が日本に滞在する間に一定の活動を行うことができること、または一定の身分や地位を有する者としての活動を行うことができることを示す入管法上の法的な資格のことです。
これは、ビザのような入国前に出される推薦書とは異なり、日本で在留することを許可するために日本で発行されるものです。
在留資格 | 該当例 | 在留期間 |
---|---|---|
技能実習第1号イ・ロ | 技能実習生 | 1年または6ヶ月・ 法務大臣が個々に指定する期間(1年を超えない範囲) |
技能実習第2号イ・ロ | 技能実習第1号から移行 | 〃 |
技能実習第3号イ・ロ | 技能実習第2号から移行 ※移行可能な職種に限る | 入国4~5年目 |
●3.技能実習生の人数枠
技能実習の適正な実施と技能実習生を保護する観点から、実習実施者(受け入れ企業)の数には一定数の上限が定められます。
実習実施者の常勤職員数 | 技能実習生の人数 |
---|---|
301人以上 | 常勤職員数の1/20 |
201~300人 | 15人 |
101~200人 | 10人 |
51~100人 | 6人 |
41~50人 | 5人 |
31~40人 | 4人 |
30人以下 | 3人 |
下記は、企業単独型の技能実習生1・2・3号の人数枠です。
〇企業単独型の受け入れ人数枠
〇団体監理型の受け入れ人数枠
●4.技能実習生の入国から帰国までの流れ
☆事前準備(約5か月)
「監理団体(事業協同組合)」に加盟をする(団体監理型に限る)
技能実習生の募集についての打ち合わせと必要書類作成・面接
外国人技能実習機構への「実習計画書」の作成と申請
☆技能実習生入国と実習(最長5年)
技能実習生は入国後1か月「入国後研修」を受ける必要あり
最長5年間実習可能。実習中は監理団体からの巡回・サポートがある
☆実習中に企業が行うこと
技能実習生が「技能検定」に合格するための適切な「技術指導」を行う
在留資格更新・在留期間変更手続きを行う(上記表に更新・変更時期記載)
技能実習生の現状と背景
●5.技能実習制度の課題
・企業
-失踪しないよう携帯電話・パスポートを取り上げる
-最低賃金で多くの残業を強いる
-劣悪な住環境の提供
・外国の送り出し機関
-劣悪な対応
-実習生や家族に余分に金を請求し借金をさせる
-外国人技能実習生に失踪を勧める
・日本の監理団体
-実習生や企業との相談業務・巡回業務の怠慢
等
●6.技能実習制度の対策
・二国間取決めの新設
送出し国との間で「送出し機関の認定」「人権侵害をしない事」等の取決めが結ばれる
取決めを結んだ国は、認定を受けた送出し機関のみ実習生を送り出せるように
送出し国でも不当な行為を罰せられるように
・技能実習法の立法
監理団体の条件が設定される
技能実習計画の認定
罰則の強化
「外国人技能実習機構」の設立
受け入れ企業がすべきこと
●7.技能実習計画の認定
「技能実習計画」の認定は、実習生が正しく実習を受けるために作られたものです。
技能実習計画の認定は、主務省が行いますが、手続きは「外国人技能実習機構」が担当します。
記載内容は、申請者・法人の基本情報から技能実習生の情報や待遇、監理団体の基本情報等です。更に、およそ50種類以上の添付書類が必要になります。
●8.実習実施者の届出
平成29年11月より技能実習計画に基づき技能実習生が実習を開始した場合に速やかに、外国人技能実習機構に対して「実習実施者届出書」を届出する必要があります。
届出をすると、外国人技能実習機構から「実習実施者届出受理書」が公布されます。
●9.受け入れ企業の必須セミナー【養成講習】
技能実習を行う際、実施に関する技能実習責任者を選ばなくてはなりません。
技能実習責任者は、技能実習を管理・運営する責任者のことで、事業所ごとに1人ずつ選任する必要があります。
技能実習責任者になるためには、「技能実習責任者のための養成講習」を修了する必要があります。
時間 | 講義内容 |
---|---|
9:20~9:30 | オリエンテーション |
9:30~11:00 | 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律について |
11:00~11:10 | 休憩 |
11:10~11:40 | 出入国管理及び難民認定法について |
11:40~12:40 | 労働関係法令について |
12:40~13:30 | 昼食休憩 |
13:30~14:00 | 労働関係法令について |
14:00~15:00 | 技能実習指導の行い方 |
15:00~15:10 | 休憩 |
15:10~16:10 | 労働災害防止・労働災害時対応について |
16:10~16:40 | 理解度テスト |
16:40~17:10 | 休憩(採点時間および不合格通知書準備) |
17:10~ | 受講証明書・不合格通知書の配布 ※準備ができ次第、配布を開始します。全員分の配布を終え次第終了となりますので、お時間に余裕をもってご参加下さい。 |
監理団体について
監理団体とは、技能実習生が安心して来日し、良い環境下で働いてもらうために
・配属後も給料はしっかり貰えているのか
・適正な実習が行われているか
・技能実習計画作成の指導
・入国前・入国後の講習
・監査、訪問指導
・母国語の相談窓口
等を、技能実習制度をスムーズに運用するために存在するのが監理団体です。
●10.監理団体の許可
監理団体は、誰もがなれるわけではありません。いくつかの基準を満たした組織のみ技能実習生を監理することが可能になります。
①営利を目的としない法人であること
②監理事業を適正に行う能力を有すること
③第1号(1年目の技能実習生)の技能実習生に対する入国講習の実施
④監理事業を健全に行うための財産を所有していること
⑤個人情報の適正な管理のため必要な措置をとっていること
⑥外部役員もしくは外部監査を置いていること
⑦基準を満たす外国の送出機関と、技能実習生の取次ぎに係る契約を締結していること
●11.優良な監理団体について
優良な監理団体とは、法令違反がなく、技能評価試験の合格率・指導・相談体制などの一定の要件を満たしている団体のことを指します。
優良な監理団体の認定を受けることで、特定監理事業から一般監理事業の許可を受けることができて、技能実習2号から技能実習第3号の移行及び受け入れをできる団体になります。
優良認定を監理団体・実習実施者が受けるためには、定められている要件120点中、6割以上で基準を満たすことができます。
① 実習の実施状況の監査その他の業務を行う体制(50点)
② 技能等の修得等に係る実績(40点)
③ 法令違反・問題の発生状況(5点(違反等あれば大幅減点))
④ 相談・支援体制(15点)
⑤ 地域社会との共生(10点)
送出し機関について
送り出し機関は、日本で働きたい現地の人々を募集し、日本へ送り出す機関のことをいいます。
監理団体とは異なり、営利・非営利関係なく運営できますが、必ず現地に法人を置く必要があります。
・監理団体と契約し実習生を送り出す
・候補者の面接前トレーニング
・日本語研修サポート
・ビザ申請
・実習中のメンタルやトラブルサポート
・技能実習生帰国後の就職斡旋サポート
等
●12.送出し機関の認定
技能実習制度では、政府から「送出し機関の認定」を受けない限り技能実習生の送出しは実質不可となっています。(二国間取り決めを結んでない国は例外)
・送出し機関のある国や地域の公的機関から推薦を受けている
・制度の趣旨を十分に理解して実習生を送り出すことができる
・技能実習生からもらう金銭を明示し、十分に理解させる
・実習生の帰国後の就職支援を行う
・日本政府からの調査・要請に応じられる
・送出し機関やその役員が過去5年以内に法令違反(金銭面での違法な契約・人権侵害行為・書類偽造等)をしていない
等
特定技能と移行対象職種
特定技能は、中小・小規模事業者をはじめとした人手不足を補うため、人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において,一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みです。
特定技能には1号と2号が存在し、それぞれ特徴が異なります。
・【特定技能】という在留資格を利用する
・在留期間は通算5年まで可能(1年、6か月、4か月ごとに更新必須)
・技能実習2号を終えている外国人ならば、特定技能の技能水準試験や日本語能力試験が免除される
・家族の帯同は認められない
・受け入れ機関の支援対象
参考元:特定技能ガイドブック
・【特定技能】という在留資格を利用する
・在留期間の上限なし(3年,1年又は6か月ごとの更新が必須)
・日本語能力の水準は測らない
・要件を満たせば家族の帯同が認められる
・受け入れ機関の支援対象
・受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象外
特定技能の受入れ対象分野(建設業の場合)
●13.技能実習2号・3号の移行対象職種
移行対象職種・作業とは、技能実習第2号又は第3号技能実習への移行にかかわる技能実習において技能実習生が修得等をした技能等の評価を客観的かつ公正に行うことができる公的評価システムとして整備された技能検定等をもつ職種・作業のことをいいます。
移行対象職種は「職種」という分類と、使用する機器や現場、製品の違いなどによって「職種」を細かく区別した「作業」という分類からなります。
●14.特定技能と技能実習の違い
技能実習制度は、開発途上国から来る技能実習生に日本の技術を持ち帰ってもらうという目的である一方、特定技能は日本企業の人材不足を補うための制度です。
技能実習はあくまで「実習」を行うのに対して特定技能は「就労」資格となるため転職等も可能になります。
受け入れの際はそれぞれで対象となる分野・職種や在留可能な期間なども異なるため事前にしっかりと確認しておくようにしましょう。
まとめ
1.技能実習生の受け入れ方式
2.技能実習の対象者(区分と在留資格について)
3.技能実習生の人数枠
4.技能実習生の入国から帰国までの流れ
5.技能実習制度の課題
6.技能実習制度の対策
7.技能実習計画の認定
8.実習実施者の届出
9.受け入れ企業の必須セミナー【養成講習】
10.監理団体の許可
11.優良な監理団体について
12.送出し機関の認定
13.技能実習2号・3号の移行対象職種
14.特定技能と技能実習の違い